リクエスト制度の導入
ここ近年のプロ野球にビデオ判定、コリジョン・ルールといった新たなルールが導入されてきた。
そして2018年シーズンから、新たなルール「リクエスト」が導入。メジャーリーグの「チャレンジ制度」の日本版で、審判のジャッジが不服であればビデオ判定を要求できるというもの。
僕はプロ野球も好きなので、DAZNやスカパーで試合を見ているのだが、確かに審判の判定に首を傾げる場面にたびたび遭遇する。そんな時には監督や選手も抗議するが、当然ながら覆ることはなかった。
日本シリーズのような大舞台や、かつてはWBCといった国際試合でも誤審と思われる判定があった。ひとつの判定がその後の勝敗を決めることは多々ある。
しかし今回のリクエスト制度導入で、試合結果を左右する誤審は減っていくだろう。
開幕戦でリクエスト制度適用
そして開幕戦から、さっそくいくつかの試合でリクエスト制度が適用された。
巨人vs阪神(東京ドーム)では、二回裏に巨人の長野の左翼ポール際の打球の判定をめぐって、高橋監督が要求。審判団が映像で検証したが、ファウルの判定は覆らなかった。このリクエストが公式戦で12球団初の適用となった。
2018年の3月30日(金)の開幕戦、ロッテvs楽天(ゾゾ)。一回1死一、二塁から楽天ウィーラーは一塁へのゴロ。ロッテ守備は併殺を狙ったが、一塁の判定はセーフ。ここでロッテの井口監督が審判にリプレー検証を要求。アウトに判定が覆って併殺となった。こちらは公式戦で初の「リクエスト成功」となった。
DeNAvsヤクルト(横浜)では、DeNAのラミレス監督が五回の攻撃で一塁でのアウトを不服として要請したが、判定通りだった。
際どい判定はひとつの試合の中で、よくあるもの。今後も毎日のようにリクエストが適用されていくだろう。
ではリクエスト制度とはどういうルールなのか? 細かいルールが定められているので見ていきたい。
リクエスト制度のルール
まず、行使対象外のプレーを記載する。
- ストライク、ボールの判定
- 打者のハーフスイング
- 走塁妨害
- 守備妨害
- ボーク
- インフィールドフライ
- 自打球
- 塁審より前(本塁寄り)の打球
は判定から外されたうえで、下記のルールが適用される。
- 要求できるのは監督のみ
- 回数は9イニングの試合で各チーム2回。延長に入ったらリセットされて以降、各1回
- 判定が覆った場合は要求回数にはカウントされない
- 検証によって判定された結果への異議は禁じる。唱えたら退場処分
- 映像の検証時間は5分以内。確証が得られない、つまり判定を覆すに足る映像が見つからなければ審判団の判断を尊重
- 例えば二塁から一塁への併殺打で両方の塁に判定を要求した場合、ワンプレーにはならない(二塁と一塁両方要求したら2回のカウントとなる)
ハーフスイングや自打球等は対象から外される(仮にハーフスイングがビデオでは振っていても、一度なされた判定は覆らない)ので、仮にそうした場面でリクエストが適用された時は、ハーフスイングや自打球ではなく、別の部分での判定を判断することになるのだ。
リクエスト制度導入で、試合の進行は大きく変わると思われる。
リクエスト制度のメリット、デメリット
メリット
- 正確な結果判定(誤審の減少)
- 審判のジャッジの質向上
- 審判への批判回避
メリットはやはり誤審の減少。これは切に願いたい。
審判としてもより緊張感を持って試合に臨むため、微妙な判定にも集中することになる。そのためスキル向上に繋がるはず。
また、明らかな誤審をしてしまった審判への批判をかわすこともできる。SNSや掲示板などで誹謗中傷が行われがちだが、審判を守るという意味でも役立つ制度となるだろう。
デメリット
- 審判の判定軽視の風潮
- 専用設備のコストの問題
- 試合時間が間延びする
逆に機械が判定すればいい、という審判への軽視に繋がるおそれもある。リクエスト制度自体は喜ばしいが、できるだけ使わなくて済むようにスキルを向上してほしいところ。
もちろん角度などで見えない場合もあるだろうから、そういう時は積極的に活用してもらいたい。
また、設備充実の問題がある。メジャーリーグでは20億円とも30億円とも言われる予算を組んでいる。チャレンジ制度専用の映像システムを整備しており、ニューヨークにあるスタジオで30球場それぞれに10台前後設置されたカメラ映像を一括検証している。
また試合ではチャレンジ対応用の審判も配備されている。こういった費用をかけていかなければ、より制度の高い映像判定は難しい。
試合時間削減のために敬遠すら申告制にしたくらいだ。最大5分としてそれぞれ2回あれば9回で20分。判定が覆った分はカウントされないから、もっと伸びる可能性はある。
しかし試合を左右する判定だけに、ある程度時間をかけるのは致し方ないところか。
ホームラン誤審事件
2018年6月22日(金)ほっともっとフィールド神戸でのオリックスvs福岡ソフトバンク戦。
3-3の同点で迎えた延長10回表2アウト一塁。ソフトバンク中村選手のライトポール際への打球は最初、ファールと判定された。その後、ソフトバンクの工藤公康監督からリクエストが要求された。
リプレー検証の結果、ファールの判定が2点本塁打に覆る。これが決勝点となって5-3でソフトバンクが勝利した。
試合後、福良監督は「(打球がポールを通過する時に)消えてない」と主張し、審判側は「消えていた(からホームランだ)」と抗議を一蹴。
監督は一度は引き上げたが、再度映像を確認し、審判控え室に赴いて再び抗議。審判団は、福良監督らとともに再び映像を確認した結果、ファールだったと「誤審」を認めた。
当初、映像は1種類のみしか確認していなかったことがわかっている。
ビデオの操作ミスだったと審判団は言っているが、あまりにお粗末な顛末。この誤審がもとでCS進出を逃すことになったら、オリックス側としてはやりきれないだろう。実際にオリックスは再試合を申し出ている。
ビデオ機器が球場ごとに違うならできるだけ統一した方がいいし、検証の専門家を置く等、何らかの対策は必要だ。可能な限り問題を洗い出して、今後誤審のようなミスをなくしてもらいたい。
アウトのコールをしなかった事件
2021年9月13日(月)バンテリンドームでの中日vsヤクルト戦。
まずは動画を見てもらいたい。
ワンナウト1、2塁の場面。セカンドゴロで打者走者は一塁セーフ。
この時点で2塁はフォースアウトになり、ランナーにタッチする必要はないが、挟殺プレーが続く。
途中で京田選手がボールを持ってセカンドベースを踏んでアピールするが、2塁の塁審はアウトのコールをせず。そのために京田選手は挟殺プレーを続ける。
その隙をついて3塁に進んでいた古賀選手がホームへ突入するも、キャッチャーに送球されて古賀選手がアウト。
このまま2アウトランナー1、2塁で試合が進むかに思えたが、与田監督がリクエスト。
その結果、2塁のフォースアウトが認められ、これが2アウト目となり、ホーム前でアウトとなった古賀選手が3アウト目を宣告されてゲームセット。
という流れ。その後、高津監督が猛抗議。抗議は退場になる規則だが、試合が終了しているためか、抗議は15分ほど続いた。
結局抗議は認められずにゲームセット。
1-0という緊迫した試合。そして優勝争いをしているヤクルトとしては、たまったものではない。私は中日ファンだが、さすがに審判に問題があると感じた。
リクエスト制度の成功率
2018年、リクエスト制度初年度の数字は以下。
公式戦858試合で494件(セ251件、パ243件)。うち判定が変更されたケースは162件で、リクエスト成功率は32.8%。
約2試合に1件はリクエストが要求されているようだ。リーグの差はほぼなく、均等にリクエストが行われていたことがわかる。
まとめ
個人的には大いに賛成したい制度。
すでに毎日のようにリクエスト制度が活用され始めており、徐々に定着しつつある。
球場によっては協議中にオーロラビジョンでリプレイを流していて、その際は球場全体が大いに盛り上がっている。観客の皆さんも好意的に受け入れているようだ。
ちなみに、僕自身も先日神宮球場に観戦に行ったのだが、たまたまリクエストが要求された。打者が一塁でアウトかセーフか、という判定だったのだが、スクリーンにリプレイが映し出されると、球場全体が大いに盛り上がった。その時には、こういう趣向もなかなか良いな、と素直に思った。※リプレイがない球場もあります
リプレイ検証での誤審というミスがあったが、今後の改善を切に願うし、ファンとしてもこの制度が発展するように応援していきたいと思います!