吉澤嘉代子

「幻影的」シンガーソングライター吉澤嘉代子のおすすめ名曲10選!

曲ごとに確立された世界観、印象的な曲調、そして心を惹きつける歌声。魅力あふれるシンガーソングライター・吉澤嘉代子。

そんな彼女に心を鷲づかみにされてしまった私のおすすめ曲を10曲紹介します!

その前にちょっと彼女のプロフィールをご紹介。

吉澤嘉代子プロフィール

1990年、埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。

父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年11月、ヤマハ主催のコンテスト「The 4th Music Revolution」JAPAN FINALに出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。(「ヨシザワカヨコとりんりんズ」として出演)

2014年メジャーデビュー。「ROCK IN JAPAN .FES 」等、国内の大型フェスヘ出演し、全国ホールツアーを成功。

私立恵比寿中学や、松本隆との共作によりシンガークミコへ楽曲提供も行う。バカリズム作ドラマ「架空OL日記」の主題歌として「月曜日戦争」を書き下ろす。

2018年6月に3rdシングル「ミューズ」をリリース。(吉澤嘉代子公式サイトより)

2018年11月7日に4thアルバム「女優姉妹」が発売されました! 初回限定盤には「吉澤嘉代子の発表会」を収録したDVDが特典となっています。



吉澤嘉代子おすすめ名曲10選

僭越ながら、おすすめ曲を10位から紹介させていただきます。

実際に聴いてもらいたいため、YoutubeにMVのある曲に限っています。まだまだいっぱい素敵な曲があるので、ぜひアルバムをそろえてみてください!

彼女はそれぞれの曲に「主人公」を設定している

それは私? あなた? それとも……。さまざまな主人公が、その曲で描かれている世界の中を生きている。

その世界を創り出した吉澤嘉代子は物語の読み手として、幻のような影のようなおぼろげな存在として、彼ら彼女たちと同じ空間に住んでいる

そんな意味を込めて「幻影的」シンガーソングライターと、勝手ながらタイトルに添えました。

それでは、吉澤嘉代子の紡ぐ物語を聴いていきましょう!

※紹介の文章が長めなので、お急ぎの場合はMVだけでも堪能してみてください

10位「残ってる」(2nd SINGLE)


この曲で彼女の知名度はぐっと広がったのではないか。そしてそれは、僕が思っているよりはるかに大きく広まっているのかもしれない。

主人公は「朝帰りの女の子」

こうした曲を歌うと、歌い手の経験が投影されているのかと思われがちだ。インタビューで「投影…されていますね。ただ、本当に気持ちの部分だけ」としたうえで、「みんなも自分の恋を投影して聴いてもらいたいなと思っています」と述べている。

彼女の曲は基本的にどれもそうなのだが、吉澤嘉代子本人を想像するのではなく、それぞれの想像する主人公に自己を投影するという聴き方が合っているのかもしれない。

つまり「聴き手の数だけ主人公がいる」のだ。

だからこそ、先に述べたように、僕は彼女を「幻影的」シンガーソングライターと呼ぶ。

※「残ってる」は2018年7月29日「関ジャム」でセッションし、生歌が披露されました!

10位「ユキカ」(3rd mini ALBUM「秘密公園」、2nd ALBUM「東京絶景」収録)

10位を2つ選ばせてもらった。

「ユキカ」というのは彼女の幼馴染みの名前。また「箒星図鑑」収録の「雪」も、友だちの「ゆきちゃん」から取っている。

友だちを題材に曲を書くとなると、必要以上に肩に力が入りそうなものだが、とても柔らかい印象を与える楽曲に仕上がっている。

恋に対して一途で一生懸命、そして時には落ち込んで……という女の子の心の動きを妙味のある言葉で表現しているMVも曲の雰囲気に合っていて素晴らしい。

9位「東京絶景」(2nd ALBUM「東京絶景」、コラボレーションミニアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」収録)


2ndアルバム「東京絶景」のタイトル曲。初のコラボレーションアルバム「吉澤嘉代子とうつくしい人たち」では、サニーディ・サービスの曽我部恵一がコーラスで参加したバージョンを収録。

2016年の「吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー」の東京公演(東京キネマ倶楽部)ではゲストとして曽我部恵一が登場し、ふたりで「東京絶景」、そしてサニーディ・サービスの名曲「東京」を歌った。

その場にいた僕は、本当に鳥肌が立つ思いで聴いていた。

そんな東京絶景はこんな意図で作られた曲。

東京の空は星がよく見えないけれど、夢をもつ人たちが集まっているから、東京の空はその星でいっぱい。という歌です。「音楽ナタリー吉澤嘉代子インタビュー」より)

僕自身、地方から東京に出てきたし、プロフィールにもあるように大きな夢を持って生きている。

それは、彼女の見る星のひとつだったのだ。夢はいくつになっても持ち続けてもいいし、また変化していくもの。

だからきっと東京の空から星のまたたきがなくなることはない。そう思いながら聴くと、じわりと心に染み入るものがある。

なお、東京絶景の舞台は京王井の頭沿線の「新代田(しんだいた)。

こちらの動画で語られているので、未見の方はぜひ見てみよう。

8位「うそつき」(2nd mini Album「幻倶楽部」収録)


女の子を好きになってしまった女の子の苦しい思い。聴き手がそれに気づくのはいつか。

「許されないのなら いっそ あなたの恋人に抱かれたいと思った」

という曲後半のCメロ部分。彼女の「嘘」を知った時、心が鷲づかみされるような切なさを感じる。

インタビューでは「ラブソングにおける嘘とは何か」から曲作りがスタートしている。

私は前にすごい嘘をついたんですよ。それは私の中ではすごく大きな嘘で、それがすごく嫌だったんです。それを思い出しているときに書いた曲で。

私のとは全然違う嘘のお話として、じゃあどんな嘘があるだろうと考えたときに、普通のラブソングとして書いてグッとくるものを作れなかったので、大きな壁……

同性に恋をするのってすごく大きな壁だと思うんですけど、その設定でストーリーを考えたらグッとくるものになりました。「音楽ナタリー吉澤嘉代子インタビュー」より)

その嘘の前に大きな壁を築き、胸に刺さる物語を創り出した。本当にグッときます

7位「がらんどう」(2nd mini Album「幻倶楽部」収録)


「がらんどうな私を満たして」と歌詞にある。自分自身がからっぽなのか、それとも心がからっぽなのか。以下のページに本人の簡単な解説がある。

主人公は「ままならない恋に落ちてしまう21歳。まわりからは高嶺の花と思われている」。わたしの心にはあなたしかいないから、失ってしまえばがらんどうになってしまう。

でも、ほんとうはわかってる。がらんどうなわたしの心を満たせるのは、あなたではなく、他の誰でもなく、わたし自身なのです。(「音楽ナタリー吉澤嘉代子インタビュー」より)

心を満たしているのは、あなた。いなくなれば、がらんどうになってしまうと訴えかけるけれど、本当に心を満たせるのはわたし自身というのはわかっている。でも……。

「本当はわかっている」のに、それを隠さざるを得ない心情が、しっとりと歌われている。

こうした情念のようなものを歌に乗せるのも、吉澤嘉代子の真骨頂といえるだろう。

6位「地獄タクシー」(3rd ALBUM「屋根裏獣」収録)


最新アルバム「屋根裏獣」収録。ストーリーは「亭主の首を持って逃げる妻」。2017年の「獣ツアー」でも、彼女は奥さまを演じていたから、「屋根裏獣」の代表ナンバーのひとつと言っていいだろう。

歌謡曲テイストな曲調で始まるが、なによりもAメロが歌うというより、朗読しているような歌い方になっているのが気に入った。

「音楽ナタリー吉澤嘉代子インタビュー」にあるように、ちょっとした聞き間違いから妄想を広げ、ひとつの曲に仕上げてしまう発想と手腕に脱帽である。

客が乗っているのに「空車」というのが怖い。なお、運転手は高校の同級生であるラッパーのACE。

5位「movie」(2nd ALBUM「東京絶景」収録)


アルバム「東京絶景」の一曲目。初めて聴いた時に、「別れ」「死」を連想したのだけれど、「MUSIC LOUNGE 吉澤嘉代子インタビュー」にもあるように、やはりそうだった。

また、歌詞を見てサビの「あたらしい、うつくしい、やさしい、いとしい」が、最後に「懐かしい、美しい、優しい、愛しい」と漢字になっていて、「おや」と思った。

それもこのインタビューに答えがあった。

漢字というのは明確な意味を持つし、すごく断定されると思うんですけど、ひらがなっていうのは、もう少し大きくてひろい意味があると思うんです。

(中略)漢字にするとクッキリしてきますよね。ひらがなは、それ自体に意味をもたないので。(中略)なので、他の曲でも広い意味で使いたいときはひらがなを使います。「MUSIC LOUNGE 吉澤嘉代子インタビュー」より)

なるほど、3番は「わたし」視点だから、より明確な意味を持つため漢字なのだなと腑に落ちた。

いや、むしろ1番と2番の主体は「わたし」ではないから「ひらがな」なのだ、と取ったほうがよいだろうか。

このあたりにも彼女ならではの視点が発揮されている。

また、こうした「死」「別れ」といった曲をアルバムの先頭に持ってくるという勇気にも感嘆する

4位「ミューズ」(3rd SINGLE)

「ミューズ」は音楽や芸術等を司る女神。

「戦っている貴方はうつくしい」。直接的な肯定の言葉ではなく、慈しみをもって称えるような、包み込むような言葉が、高い純度ですっと心に沁み入ってくる。

この曲をプレゼントしたいと思う友達がいて(中略)

物語ではなく心象風景を描こうとした時に、言葉のひとつひとつが誰かを傷付けることがないように、間違いがないように言葉を選ぶことがすごく難しかったです(中略)

「ミューズ」では自分自身の生き方や過去との向き合い方をメインに、お守りみたいなものになる曲にしたいと思って書きました。「OKmusicインタビュー」より)

インタビューにもあるとおり、一語一語を慎重に選び、丁寧に紡いでいったことがわかるような歌詞だ。

こちらの曲は【2018年上半期ベストソング】私的Top15をランキング形式で紹介!にも堂々ランクイン。

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3位「泣き虫ジュゴン」(インディーズ1st mini Album「魔女図鑑」、1st ALBUM 「箒星図鑑」収録)


一聴して地味な曲に感じるけれど、聴けば聴くほど心に響いてくる。
冒頭から海の底にいるような音が鳴り、静かな思いがやがて強い波動のような感情となってぶつかってくる。

吉澤嘉代子自身は語っている。

『泣き虫ジュゴン』は思春期(17歳)のときに書いた曲なので、それが自然(な感受性)と言えるのかはちょっと分からないです。でも、自分の内面が現れている曲だとは思います。

(中略)生まれたときの産声は祝福されていたのに、大人になると泣いちゃダメって言われるじゃないですか。でも大人になって泣くことも肯定したいなと思ったんです。

どうすればそれを肯定できるかなって思ったときに、「海の中で泣けばいいんだ」って思いました。「OTOTOYインタビュー」より)

冷たい、切ない世界で泣く苦しさも、終盤の「海のなかでなくんだよ」で救われる。

ここでは最後が漢字になった「movie」と反対に、「泣く」が「なく」になっている。

「泣く」に限定しない、広い意味での「なく」を表している。それは「鳴く」でもいいだろうし、「海水と混じり合った涙」でもいいだろうし、聴き手によって意味はさまざまに変化する。

なお、歌詞中の「122回紡いだ言葉」の「122」というのは、埼玉を縦断する国道122号線からきている(2015年3月8日、浦和パルコでのイベントライブで本人談)。


※出典Wikipedia

もちろん、彼女の地元である川口市を通っている(さいたま市と豊島区の間)。

2位「ストッキング」(1st ALBUM 「箒星図鑑」収録)


2017年の獣ツアーで、「私の大事な曲」と宣言したうえで歌われたこの曲は、魔女修行時代の彼女と現在の彼女が屋上の秘密基地で交わる。

『魔女の宅急便』と『ストッキングを引き裂く』という子どもと大人の対比、そしてラストで『夜空に伝線したほうき星 きれいでしょう』で両者が見事に重なる。

魔女修行していた子供の頃は、完全に魔女になれると思い込んでいたんですよね。

でも大人になるとすごい人たちがたくさんいて……それこそ音楽の世界なんて化け物だらけで、自分に自信をなくしてしまうこともあって。

そんなときに、あの頃の気持ちを取り戻せたら、という気持ちで書いたんです。

子供の頃は誰かによって自分を変えてもらいたいという受動的な態度でしたけど、今だったら自分で未来の自分を迎えにいけるんだろうなって思うんです。「音楽ナタリー 吉澤嘉代子 少女時代の終わり」より)

こうした思いが詰まった、時間を超えた魔法のような歌。

この曲が、もっとも彼女自身が投影されていると感じる

そういう意味で「大事な曲」というのはとてもわかるし、この曲は彼女の中でもエポックメイキングな作品ではないかと思い、数ある曲の中で2位に推した。

1位「未成年の主張」(1st mini Album「魔女図鑑」、1st ALBUM「箒星図鑑」収録)


僕が彼女を知るきっかけになった、もっとも思い入れのある曲。

ある日、スペースシャワーTVをつけっぱなしにしていたら、突然この曲のMVが流れだした。別のことをしていたにもかかわらず、思わず聴き入ってしまい、それ以来彼女の虜に。

まるで魔法がかかったのごとく、気がついたらファンクラブ「ほうきの会」にも入会していた。

その時に流れていたのはリリックビデオだったのだけれど、権利の問題かわからないがYoutubeからは消えてしまった。その代わり、今は巣鴨駅で歌唱するバージョンが見られる。

「未成年の主張」を巣鴨で歌う。

そう、巣鴨に集うお年寄りも、かつては未成年だったのだ。「あなたが好きです!」なんてストレートな告白を、きっとしたであろう人々に向けて彼女は叫ぶ

とはいえ、彼女が本来伝えたい意図は別にある。

インタビュアーの「告白の歌なんですけど、相手(=「あなた」)のことは一切描かれない。いわば主人公はずっと「マイクチェック」ばかりしているんですよね。」という問いに対する答えが以下。

そうですね。サビの「好きです」っていう歌詞とか、告白っていう設定とかは、私にとって記号でしかないんですね。

それよりも、「大人が書いた台本はいらない」とか「今日からやらせを廃止にさせて」っていう部分で自分の気持ちを書いています。

でも、そういう気持ちを伝えるために、あえてラヴソングっていう形式を選んだんです。「OTOTOYインタビュー」より)

もともとは「がんばらない曲」から「ラブソング」にシフトチェンジしたそうだけれども、本質的な部分は随所に残されていると感じた。でも、しっかりラブソングになっている。

やっぱり「あなたが好き」という言葉の「届く力」は、万人に共通じゃないかなと思ったし、マイクチェックを終えた後の「告白本番」の光景を思い描くだけでドキドキする。

そんなわけで、僕はこの曲を一位に推しました!

長々とおすすめ曲を紹介してきましたが、ここまでおつきあいいただき、ありがとうございました!

吉澤嘉代子おすすめ曲まとめ

1位:未成年の主張
2位:ストッキング
3位:泣き虫ジュゴン
4位:ミューズ

5位:movie
6位:地獄タクシー
7位:がらんどう
8位:うそつき
9位:東京絶景
10位:ユキカ
10位:残ってる

吉澤嘉代子ライブ情報

みつあみクインテットツアー

新しい試みでもある、クラシカルなライブの開催が決定!

・2018年12月4日(火)
ザ・フェニックスホール 大阪
開場 18:30 / 開演 19:00

・2018年12月7日(金)
名古屋 ボトムライン
開場18:30 / 開演 19:00

・2018年12月14日(金)
銀座 ヤマハホール
開場18:30 / 開演 19:00

・2018年12月15日(土)
銀座 ヤマハホール
①開場 14:30 / 開演15:00
②開場 18:30 / 開演19:00

こちらのツアーは全日程終了しました。

女優ツアー2019

「女優姉妹」をひっさげてのツアーも開催されます!

・2/10(日)福岡 都久志会館
開場16:30 / 開演17:30

・2/15(金)NHK 大阪ホール
開場18:00 / 開演19:00

・2/17(日)BLUE LIVE 広島
開場16:30 / 開演17:30

・3/03(日)チームスマイル・仙台PIT
開場16:30 / 開演17:30

・3/06(水)名古屋市芸術創造センター
開場18:00 / 開演19:00

・3/10(日)Zepp 札幌
開場16:30 / 開演17:30

・3/17(日)東京 昭和女子大学 人見記念講堂
開場16:30 / 開演17:30

チケットはいずれも6000円。全席指定です。

ぜひ直接、彼女の創り出す物語を聴きにいきましょう!

そして、2018年11月7日に4thアルバム「女優姉妹」が発売されました! 初回限定盤には「吉澤嘉代子の発表会」を収録したDVDが特典となっています。

今日の1枚 vol.1 - 吉澤嘉代子『魔女図鑑』(2013年) 「今日の1枚」として時代・洋邦問わずに、おすすめのアルバムを紹介するこのコーナー。 今日の1枚 - 吉澤嘉代子『魔女図鑑』 ...

吉澤嘉代子ライブレポート

第1回 ほうきの集い~決起会~

2018年3月30日、31日に初のファンクラブイベントが開催されました! 

僕も行ってきましたので、下記の記事で簡単なレポートをしています。

吉澤嘉代子「第1回ほうきの集い~決起会~」さらっとレポート

吉澤嘉代子の発表会

2018年6月16日、17日に開催。

両日ともにライブレポートを書きましたので、下記をご参照ください。

【ライブレポート】「吉澤嘉代子の発表会 子供編」さらっとレポート

【ライブレポート】「吉澤嘉代子の発表会 大人編」さらっとレポート

みつあみクインテットツアー

2018年12月14日の銀座ヤマハホールの回に行きました。

もうひとつの吉澤嘉代子の世界「みつあみクインテットツアー」ライブレポート

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