「今日の1枚」として時代・洋邦問わずに、おすすめのアルバムを紹介するこのコーナー。
今日の1枚 – モーモールルギャバン『野口、久津川で爆死』
第7回目はモーモールルギャバンの『野口、久津川で爆死』(2009年)!
モーモールルギャバンは2005年に京都で結成。
メンバーはゲイリー(ボーカル、ドラム)、マルガリータ(ベース)、ユコ(キーボード、ボーカル)の3人でギターはいない。
本作はインディーズデビューアルバムにあたる。なお、「久津川」は京都府城陽市にある近鉄京都線「久津川駅」を中心とした地域。
それでは『野口、久津川で爆死』を紹介していこう!
1曲目「琵琶湖とメガネと君」。
うねるベースがかっこいい。一曲目でありながら「死にたい」を連呼し、
君のメガネ壊したいな メガネが無ければどこにもゆけずに
世界は暗闇 君と二人きり
琵琶湖は大きいな 悲しいくらい 小さな僕
時には消えたくもなる
と歌い上げる、ちょっと切ないナンバー。
2曲目「POP! 烏龍ハイ」。
アップテンポなナンバー。
「烏龍」「ハイ」の掛け合いが目立つが、その部分以外のメロディラインも素晴らしい。
3曲目「細胞9」。
インスト。エフェクトボイスを使った「細胞ナイン」のコーラスがループする。ライブでは肉声。
ベースライン、ドラムソロ、そしてキーボードの存在がそれぞれ際立っており、バンドとしての一体感が垣間見える。
4曲目「コンタクト」。
名曲に数えたい。
ボーカルはユコが務め、「涙が止まらないのは別れ話のせいじゃない。コンタクトがまだ慣れない」とはかなげに歌うメロディが心に染みる。
5曲目「君のスカートをめくりたい」。
一転してアップテンポでコミカル、カオスな曲。ひたすら「君のスカートをめくりたい」「ベイベベイベ」と繰り返す。
これはラストナンバー「サイケな恋人」の伏線になっていると解釈することもできる。
6曲目「ユキちゃん」。
人気曲。「ズキュン バキュン ズキュン」と、ユキちゃんへの思いを延々と吐露していく。
ゲイリーはインタビューで、「モデルになった女性っていうのは、高校三年生の時好きだった“マミちゃん”という女性で」と述べている。
さすがに「マミちゃん」はマズイと思ったのだろうか。
7曲目「野口、久津川で爆死」。
歌詞は基本的に「野口、久津川で、爆死」のみ。
中盤にマルガリータによる寸劇が挿入されている。ライブでは寸劇部分で野口の近況を報告している。なお、野口(康史)は初期メンバーである。
8曲目「Ca☆Na」。
Ca、Naはカルシウムとナトリウム。ハンドクラップをリズムに取り入れたポップナンバー。
さようなら この世のさだめ いつかの別れ
カルシウム不足の君と海岸でデート
別れの未来を予測するような歌詞に、グッとくるものがある。
9曲目「SOS」。
スピード感あふれる曲。
恋人が臭い人 悲しいよね
友達に掘られると悲しいよね
という、誰にも言えなくて助けて欲しい気持ちをSOSと歌う。
10曲目「サイケな恋人」。
名曲。アーティストを縛りつける過去の作品というものがあるのだとしたら、この作品はモーモールルギャバンのそれに該当するかもしれない。それほどに良い曲だ。
メロウでありながらキャッチーさを失わず、徐々にテンションを高めてラストまで突き進む。ユコのボーカルもはまっている。
僕もとても好きな曲だ。
個性的な曲が連なり、モーモールルギャバンの世界観を見事に表していると言える。
ギターレスバンドだが、かえってメロディラインがシンプルになり、聴き手に直接的に訴えかけることに成功している。それぞれの技量が高い水準にあるからこそ。
以降のアルバムも素晴らしいが、まずもってオススメしたい作品だ。
今回はモーモールルギャバン『野口、久津川で爆死』を紹介しました。
次回もお楽しみに!