ヒグチアイ

愛を歌うシンガーソングライター ヒグチアイのおすすめ曲8選+1

愛を歌うシンガーソングライター ヒグチアイ

愛の形って、ひとつだけじゃないんだよ。

ヒグチアイの曲を聴いていると、ふとそんな言葉が頭をよぎる。

さまざまな形状をした愛が、時には激しく心を揺さぶり、また時には優しく心に触れる。

ヒグチアイの曲にはラブソングが多いが、通りいっぺんの愛ではない。満たされ、裏切られ、頼られ、恨まれ……愛を根にして、さまざまな感情が枝葉のように伸びていくのだ。

ヒグチアイをどうやって知ったのか。じつはほとんど覚えていない。いつの間にかそこにいたという感覚。でも、それで良いんじゃないかと思っている。

親しい友人、そして恋人ですら、最初の出会いを思い出せないことがある。自分にとってヒグチアイは、そうした近しい存在なのかもしれない。

だから今日もあたりまえの日常として、ヒグチアイの曲を聴く。


そんなふうに日々ヒグチアイの曲を噛み締めている自分が、おすすめ曲を8曲(+こっそり1曲)選んだので紹介させていただきます!

その前にプロフィールを紹介。

ヒグチアイ プロフィール

平成元年生まれ。生まれは香川、育ちは長野、大学進学のため上京し、東京在住。

2歳のころからクラシックピアノを習い、その後ヴァイオリン・合唱・声楽・ドラム・ギターなどを経験、様々な音楽に触れる。18歳より鍵盤弾き語りをメインとして活動を開始。

2013年9月に渋谷O-WESTで初の自主企画ライブ。

2014年2年にシンガーソングライター大柴広己をプロデューサーに迎え、1st ALBUM「三十万人」リリース。

2015年3月にセルフプロデュースによる2nd ALBUM「全員優勝」をリリースし

2016年11月にFull ALBUM「百六十度」でメジャーデビュー。

ヒグチアイオフィシャルサイトより

ヒグチアイおすすめ曲8選+1

僭越ながら、ランキング形式で紹介させていただきます。

実際に聴いてもらいたいため、YoutubeにMV等のある曲から選んでいます。他にも素敵な曲がたくさんあるので、ぜひアルバムをそろえてみてください!

それでは、聴いていきましょう!

※紹介の文章が長めなので、お急ぎの場合はMVだけでも堪能してみてください

第8位:ココロジェリーフィッシュDebut Album「三十万人」収録)

失恋の歌である。

この曲には大きな心の傷を表現する湿っぽさがなく、かつ婉曲表現がうまいため、前向きに受け入れることができる。

あれから途絶えた連絡 つぶやいたメールは減ってくよ
自然に消えていくのかな? いつまでも聞けないまんま

ねえ こんなことやめたいよ ほんとはただ逃げたいの
心の行方を知りたいの

君もジェリーフィッシュ 寄せては返すよに 2人の関係は曖昧で
誰が悪者になれば あたしが傷つくだけですむの?

海の中ぷかぷかと浮かんで そのまま流れに身を任せて
知らぬ間に 君の隣に 流れ着きたい

曖昧だけど透明な心の動きが、「ジェリーフィッシュ」というキーワードで見事に表現されている。

ラストは「戻りたいなんて言わない 欲しいのは未来」と締める。未来を見据えて歌う歌詞は自分の心と共鳴する。

ちなみに離婚経験のある僕は、今もジェリーフィッシュ状態です。

第7位:ラジオ体操ミニアルバム「猛暑です e.p」収録)

子どもの頃にラジオ体操に通った人も多いはず。しっかり体操ができたかどうかより、行けばとりあえずハンコをもらえる。

それを人生に置き換えた歌だ。

と言われてもわけがわからないと思うが、この三行を見れば腑に落ちる。

きただけでもらえるハンコ
生きただけでもらえるハンコ

よくがんばりましたって押してほしいよ

そして、

追い風がきみを進ませて
向かい風が支えてる

いつだって真ん中 きみがいる
だから一人じゃないんだよ

全員が背中を押してくれるわけではない。時には正面から押し返されることだってある。

「向かい風」は得てして良くないイメージの表現として用いられるが、この曲の場合はそうじゃない。追い風と向かい風によって、自分の歩みは安定するのだと気づく。

そして、歌詞の最後で立場が反転する。

よくがんばりましたって押してあげるよ

第6位:わたくしごとDebut Album「三十万人」収録)

2017年10月の「まだまだ猛暑ですツアー」時に、ファン投票で1位だったと紹介したうえで歌われた曲。僕もすごく好きな曲です。

心の葛藤が鋭い言葉で表現されていて、とても刺さる。少し歌詞を多めに引用させていただきます。

限界値なんて手の届かない ずっとむこう側にあって
壊れりゃいいのに いつまでたっても元気だな

愛してほしいアルコールの力を借りて言えたつもりで
いつまでも抜けない甘えた根性 嫌悪感

あのころより大人になったね でも知らないことが増えて
中途半端にかためられた常識やぶれない

必死にたたかっていますって、味方ばかり集めたんでしょう

「情けない」「もどかしい」「こんなはずじゃない」……。焦燥感と現実とのギャップが、これでもかとばかりに突きつけられる。

もう終わりかい もうやめるかい 動かないかい
自分に問いかける 何度も問いかける

もうやめよう もう逃げよう 諦めよう
自分に問いかける 何度も問いかける

挫けそうになり、それを許容してもいいのではないかと自問する。

わたくしごとながら、小説新人賞の最終候補に複数回残りながらそのたびに落選したときは、「もう駄目なんじゃないか」という考えがぐるぐると頭をめぐったもの。

それでも僕は夢を見たいから
それでも僕は夢を見たいから

それでも僕は夢を見たいから
それでも僕は夢を見るから

でも、本当に大切なもの、大切な夢、それは棄てられない。ラストで「夢を見たい」から「夢を見る」というように、願望から強い決意へと変化して曲は終わる。

タイトルの「わたくしごと」というのは、聴き手の「わたくしごと」にも当てはまるんじゃないかなと思ったりする。なので、僕も諦めずに挑戦し続けることができるのだ。

少し突き放しているようだけれども、根底に優しさがたっぷり流れている曲だと、僕は聴いていてそう思った。

第5位:猛暑ですミニアルバム「猛暑です e.p」収録)

これも失恋の歌だけれども、裏テーマによると「バンドマンの男はダメ」とのこと(笑)。リアルサウンドインタビューより)

もちろんストレートに歌詞を解釈しても、「恋が終わることに気づく」という意味合いは通じる。

AメロとBメロで、幸せな記憶と現在の切ない状況が交互に歌われる。

そしてサビの「扇風機返してよ」のインパクトは強烈。だが、実際のところ「扇風機」は「会いたい」ための口実だと最後に歌われる。

結局、会えないまま猛暑を迎える。「ハッピーエンドはドラマの中だけ」という部分で、バッドエンドに終わったことがわかるのだ。

しかしこの明るい曲調と個性的な歌詞によって、「失恋」をダイレクトに感じさせないのが、とても良い。

第4位:かぞえうたDebut Album「三十万人」収録)

「かぞえうた」ということで、「1」から順番に歌われる。

1 弁当つくるようにした
白い
ごはんに鰹節と醤油をかけただけ

2 暑くてもエアコンつけない
プラスチックより竹ののうちわのほうが好きだ

3 テレビのつけっぱなしやめた
意外と雨音や遠くの音、いろんな音があるもんだな

といった具合である。

テンポよく、生活のちょっとしたこだわりと変化、気持ちを歌っていく……。それがまた身近に感じられることばかりで、とても共感できる内容になっている。

このまま生活について歌われていくと思いきや、最後の「0」でこれが恋愛ソングだとわかる。その瞬間、世界が一気に広がり、あざやかな色彩に転調する。

本当にどきっとして、はっとさせられてしまった。そして新たな「かぞえうた」が始まるのだ。そう、二人の生活の「かぞえうた」が。

第3位:備忘録メジャーデビューアルバム「百六十度」収録)

ヒグチアイ自身を歌った曲なのだと思う。でも、この曲に共感できる人は多いのではないか。他人事でなく、自分事としてとらえることができるからだ。

25になったら地元に帰ると言ったけど 帰るような勇気はありません

評論家 会社員 に並ぶような冠名の前に 自称とつく可能性の高さ

憧れは「pink」で描かれていた東京 染まれたら楽になれたでしょうか

「終電逃してタクシー」「有名人に会いました」
いつだって蚊帳の外 貯金なし恋人なし なのになぜかどこか安定しています

上京して地元に思いを馳せる歌は多いが、「帰る勇気はない」とはっきり述べる。

ここで言う「pink」とは漫画家・岡崎京子の作品。主人公の明るい生き方に憧れを持つ人が多い一方で、「物事はいつもうまく運ぶとは限らない」という暗い一面もある作品だ。

岡崎京子の描く作品は陰惨な中にも、スタイリッシュで煌びやかなキャラクターや世界観があり、羨望の対象になることが多い。

思い描く華やかな東京生活とは違っている境遇なのに、心は安定するという矛盾。

天邪鬼でも高飛車でも愛してくれた人 どうか元気でいてほしい

愛していたやりたかった居たかった 欲しかった待っていた夢だった
もう全部捨てた 全てを捨てたつもりで全てのおかげさま

背負わずとも背中を押す無数の手のひら

どうか自分よ 忘れるな
どうか自分よ 忘れるな

「どうか自分よ 忘れるな」とあるように、ヒグチアイ自身も「自分に向かって“忘れるな”と言っている歌なんですよね」と語っている。CDジャーナルインタビューより)

どう聴いて欲しいかという問いに対し、少し長いが同インタビューから引用する。

私みたいな人間を救いたいっていう気持ちが、一番強いんです。

なんだろうな……病気とまでは言えないけれど、それはあくまで病名がついてないだけであって、本人はすごく苦しい。

でも、他にもっと苦しんでいる人がいるのもわかっているから、苦しいけどそれを口に出せない。そんな人って絶対いる、と思っていて。そういう人たちを救えたらいいな。

というか、自分もそういう気持ちだし、歌を聴いて“私もそういう気持ちです”と言ってもらえたら、すごく救われると思う。

そういう人がたくさんいたら、そこに名前がつくかもしれないでしょう。名前がついたことで、遠慮せずに会社を休めるようになるかもしれない(笑)。CDジャーナルインタビューより)

ヒグチアイの歌詞は「共感性」が高いと思うが、それがこのインタビューでも垣間見える。だから、重めの歌でもすっと心に入ってくるのだ。

第2位:「わたしはわたしのためのわたしでありたい」(セカンドフルアルバム「日々凛々」収録)

 

大事にするのは他の誰でもない自分だと、気づかせてくれる曲。

自分がどうなるのか、それは描かれていないのだけれど、ヒグチアイ自身も「途中経過の歌。道の途中」とコメントしている。

まだまだ道半ば、という方は多いと思うが、迷った折りにこの曲を思い出して聴いてみると良いかもしれない。僕もよく聴いています。

こちらの曲は【2018年上半期ベストソング】私的Top15をランキング形式で紹介!にも堂々ランクインです。

【2018年上半期ベストソング】私的Top15をランキング形式で紹介! 2018年上半期ベストソング 私的Top15 音楽を扱うブログの端くれとして、今年の上半期ベストソングを紹介していこうと思う。 ...

第1位:まぼろしの人2nd Album「全員優勝」収録)

新しい人 君の隣で 堂々と笑っていたけど
あなたもいつか 同じ気持ちで 別れる日がきっと来るでしょう

もう一度戻りたい 君のこと 今でも変わらずに愛してる
それでも本当は 同じだけ 憎んでる 

この曲も失恋歌だが、歌詞からもわかるとおり「憎しみ」「恨み」がベースとなっている。インタビューでもそう語っている。

この曲を書いた時は、自分の中で「この曲を書かないとやってられない」くらいの気持ちだったんですよね。

「そうなったら、一生忘れないことなんだよ」って。主人公から見たら“恨み”っていう部分があって、違う相手にしてみれば“良い思い出”になったりもする。

どっちにしろ「一生忘れないこと」だなって思うんですね。本当に伝えたいんですよね…「一生忘れないよ」って(笑)。ジャングルライフインタビューより)

視点が違えば感情も異なる。しかし「一生忘れないこと」であることに違いはない。

ところが、

走り出した 君のもとへ まだ君のこと好きなの

手を掴んで 振り向いたのは 知らない 君じゃない

私が見てたものは?

駆けよって手を掴んだ人は……。忘れられないはずの人とは出会えず、まぼろしのまま終わる。

この先も情念に絡めとられ続けていく様が浮かぶ。または、もうその人は「まぼろし」なのだと気づき、忘れられないにせよ、人生に必要な経験なのだったと受け入れて生き続けるのか。解釈はいくつも考えられるが、「一生忘れないこと」ということは変わらない。

そうした強い思いがひしひしと伝わってくる曲だ。

新宿の路上で清水葉月が舞うMVもすばらしく、その動きに釘付けになる。

 

+1曲:やわらかい仮面ミニアルバム「猛暑です e.p」収録)

公式ではないようなので、+1曲として別枠で紹介。

うらめば うらむほど わたしはきれいになる
「どうか あなたが幸せになりませんように」

今もまだ誰かの前で 芝居続けてる
もう気付いてる?
騙されるふりしてあげていること

という強烈な出だしで始まるこの曲は、2017年7月からテレビ東京系で放送されたアニメ「闇芝居」第5期のエンディングテーマとして作られた。

ラストを「一生許さない 死んでも許さない」で締める意図は、

相手のことを忘れてしまうことが一番の復讐になる気がして、許すところまで行ってくれたらいいなあと思います。

許さない、と思い続けるエネルギーは生きるエネルギーにもなりますしね。世の男性のみなさま、言い訳は無用ですよ。音楽ナタリーコメントより)

ということであり、「許さない」「忘れない」うちは復讐にはならないのだ。

「まぼろしの人」でも「一生忘れない」がキーとなっている。「忘れる」ことが一番の復讐ではあるけれど、やっぱり刻まれた記憶は残り続けるもの。

そうした情念をプラスに作用させるのか、マイナスに作用させるのか。それは「忘れない」という刻印が刻まれた後の生き方によるのかな、と思ったりした。


以上、長くなりましたが聴いて&読んでいただき、ありがとうございました!

歌という手法で、さまざまな物語を作り出すヒグチアイ。「アイ」の形はひとつだけじゃない。

今後の活躍も大いに期待しています。僕も追い続けていきたいと思います!

ヒグチアイおすすめ曲まとめ

1位:まぼろしの人
2位:わたしはわたしのためのわたしでありたい

3位:備忘録
4位:かぞえうた
5位:猛暑です
6位:わたくしごと
7位:ラジオ体操
8位:ココロジェリーフィッシュ
+1曲:やわらかい仮面

ヒグチアイ ライブ情報

ライブ情報は「ヒグチアイ オフィシャルサイト」をチェック。

また、ぴあでもチケット取り扱いしていますので、「ヒグチアイ」で検索!

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