僕はゲーム会社で働いていた経験があるので、ゲーム業界を扱った漫画を好んで読んできました。
そこで、実際に仕事の時に感じた思いとともに、おすすめの漫画5作品を紹介いたします!
さっそくいってみましょう!
『東京トイボックス』シリーズ
『東京トイボックス』(全2巻)
2005年~2006年、『モーニング』(講談社)連載作品。作者はうめ(原作・小沢高広、作画・妹尾朝子)。
次作の『大東京トイボックス』とともに、個人的にイチオシのシリーズです。
弱小ゲーム制作会社「G3」の社長・天川太陽(てんかわたいよう)を中心に、ゲーム業界のシビアな世界と、かつて太陽が所属していた大手ゲーム会社「ソリダスワークス」との攻防を描く、一大ゲーム業界漫画。
『東京トイボックス』(全2巻)ではG3に出向となった進行管理マネージャーの月山星乃(つきやまほしの)とともに、ゲーム制作に邁進します。
主人公の天川太陽は破天荒な性格で、決め台詞は「仕様を一部変更する!」。
開発側としては、この「仕様変更」というワードがどれだけ恐ろしいことか……経験者であれば大きくうなずくことでしょう。
一方、星乃は現実的な思考の持ち主ですが、時に熱い一面を見せ、二人が引き起こす化学反応によって物語が進んでいきます。
政治的な駆け引きといった部分はともかく、制作現場の様子をリアルに表現できていると思います。
全2巻というコンパクトな構成ですので、まずは試しに読んでみるにはうってつけのボリューム。
なお、時代的にはプレステ2からプレステ3(2006年11月発売)の移行前に当たります。懐かしさを感じる人も多いのでは。
『大東京トイボックス』(全10巻)
『東京トイボックス』が気に入った方は、ぜひこちらの続編を。
『コミックバーズ』(幻冬舎コミックス)で2006年11月から連載開始。これはプレステ3が発売されたのと同時期です。実際、1巻ではプレステ3を手に入れるシーンも。
新キャラクターとして企画部に間違って入社した百田モモ(ももだもも)の成長、そして前作から太陽と因縁のある幼なじみのソリダスワークスゲーム開発局AM2局長・仙水伊鶴(せんすいいづる)との対決もよりヒートアップしていきます。
僕はゲーム会社にいた時は企画部にいましたが、多数の企画を考えてようやく1つ採用になるというエピソードはまさにその通り。そこに至るまでのモモの心境や行動は、読んでいて本当に心に響きました。
こちらは全10巻とややボリュームあり。でもスピーディーでテンポのよい展開は、そんなことは感じさせないほど。
天川太陽、そしてG3の運命はどうなっていくのでしょうか。気になってページをめくるスピードは上がるばかり。ぜひこの世界にどっぷり浸かってみてはどうでしょう。
スピンオフ的な扱いで以下の2冊もあります。『東京トイボックス』の世界観を補強するために、こちらも読んでおきたいですね。
『NEW GAME!』(既刊8巻)
『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)で2013年から連載中の4コマ漫画。作者は得能正太郎(とくのうしょうたろう)。
4コマ漫画ではあるもののストーリーがしっかりしていて、高校を卒業して入社したグラフィッカー・涼風青葉(すずかぜあおば)の成長をしっかり描いています。
憧れのキャラクターデザイナー・八神コウの部下となり、時には挫折しながらコウに近づいていく姿に心を動かされます。
女性キャラクターが非常に多く(アニメ版では男性の登場はほぼ皆無)、その設定にちょっと敬遠する方もいると思いますが、物語としては非常に熱いものがあります。
開発・グラフィック・企画といった職種の違いによる苦労、シリーズ物を作る感覚等は共感するものが多かったです。
僕は企画部でしたが、もちろんデバッグもしていたので、そのつらさを思い出してしまいました。でも、自分の名前が初めてクレジットに載った時には感動したのを覚えています。
あと、『東京トイボックス』でもそうですが、下着姿で会社に泊まるという描写はある意味定番でした。うちの会社では段ボールを敷いてその上に寝ていましたが……。僕はシャワーを浴びないと気持ち悪くなるので、だいたい始発か自転車で一回自宅に帰るというのをしていましたね(今はもうそんなことできません!)。
本作は4コマ構成ですので、軽く読むのにも最適。おすすめです!
『クランクUP!!』(全19話)

2018年1月、漫画アプリ「マンガZERO」のオリジナルレーベル「コミックジヘン」(株式会社Nagisa)にて連載開始。作者は大関詠嗣。
ゲーム業界への就職を諦めた主人公、城宮区藍(しろみやくらん)が、ゲーマーサロン「84(はし)」を訪れることで、ゲームクリエイターたちと出会い、クリエイターの本質を学び成長していく姿を描いた物語です。
第1話で週刊ファミ通第4代編集長「バカタール加藤」氏とゲームセンターで出会い、実際に存在するという「84」へ招待されるところからスタート。
その後は堀井雄二氏(ドラクエ)、岡本吉起氏(ストリートファイターⅡ)、辻本良三氏(モンスターハンター)といった大物クリエーターたちが続々登場。
実は僕もそれなりに知名度のある方の元で働いていたので、今後登場するか楽しみです。
『百万畳ラビリンス』(全2巻)
ヤングコミックチェリー/ヤングコミック(少年画報社)で、2013年6月号から2015年4月号まで連載されていた作品。作者はたかみち。
こちらはゲーム業界そのものではなく、異世界に迷い込んだ主人公たちを描くSFファンタジー。
ただ主人公の玖波島礼香(くばじまれいか)、そしてともに迷い込んだ庸子は、ゲーム会社でデバッグを行うアルバイトをしているという設定。
しかも礼華はバグ探しが大好きで、「バグって素敵。なんたって、制作者さえ予測できない未知の領域への扉なんだもの」という感覚の持ち主。
この思考には恐れ入りました。とにかくバグは潰すもの。そう教わりましたし、実際にそうしてきました。
当時バグレポートは手書きで、何枚も何枚も苦しんで書いてきた記憶しかありません。そんなバグが素敵なんて!(彼女がバグを好きになる理由は作中で描かれています)
そのバグを探す感覚で、迷宮を探索していきます。そうした礼香の持ち前の好奇心が、探索ものにぴったりとフィット。
やがて著名ゲームディレクターである多神が登場し(最初はチャットによるやりとり)、物語は謎を深めていきます。
彼女たちは現実の世界に戻ることができるのか。
全2巻ということもあり、こちらもさっくり読めるボリュームです。
まとめ
「東京トイボックスシリーズ」「NEW GAME!」「クランクUP!!」「百万畳ラビリンス」を紹介しました!
ゲーム業界はここ数年、大きな時代の変化を迎えています。ゲームセンターは減少し、家庭用ゲーム機よりもスマホアプリゲームが隆盛を誇っています。しかしどれだけ時代が変化しようとも、その裏側には必ず制作者たちが存在します。
ゲーム業界をテーマに扱う漫画を読み、業界に興味を持っていただければ幸いですし、漫画を読んだからゲームを作りたくなった、そして実際に作る人になったという方がいたら最高ですね。ただ、ものすごくきつい仕事でもありますので、覚悟は必要かな~と思います。
僕は故あってゲーム業界からは身を引いてIT企業で働いていますが、今もゲームは相変わらずプレイしています(プレステ4、Switch等の家庭用ゲーム機が主ですが)。
今後もゲーム業界を扱う漫画を紹介していければと思います!