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『サザンと彗星の少女』ネタバレなしレビュー~現代の80年代風SF&ボーイ・ミーツ・ガール

マンガ大賞2019第5位を獲得した、『サザンと彗星の少女』(赤瀬由里子・作)を読んだ! 以下、ネタバレなしレビュー。(©2018リイド社)

他惑星へ出稼ぎに出ている地球の青年サザンは、ある夜、赤い髪の少女・ミーナと出会う。

彼女は体内に強大な力を秘めており、そのエネルギーを狙って腕自慢の盗賊たちが次々と襲ってくるという。

再会を約束した日、何も言わずに姿を消したミーナ。彼女を追う中で「破滅を呼ぶ生命体」の存在を知ったサザンはー

というのが、あらすじ。

王道展開のボーイ・ミーツ・ガールSFコミック。絵柄は80年代風で、懐かしさを感じる人もいれば、逆に新しさを感じる人もいるんじゃないかな。

しかも上下巻・500ページをフルカラーという離れ業。とにかく色彩が鮮やかで、読んでいて楽しくなってくるし、喜怒哀楽を色でも表現しているものだから、感情移入がしやすい。

ストーリーは、王道まっしぐら。小気味よいセリフやコマ割り、テンポがよく、とにかく読みやすい。最後まで一気に読み終えてしまった。

キャラクターもある意味類型的なんだけれども、物語世界の中で生き生きとしている。サザンの一途さや、ミーナのまっすぐさ、そして豚なのにもしかしたらもっとも人間らしい直情型のキッド。

正直、読み始めた当初はベタすぎてどうかな、と思っていたものの、するっと世界に溶け込めてしまい、上巻を楽々クリアして下巻へ。ラストの感動的なフィナーレでは、ちょっとウルっときてしまった。

今や古典ともいえるマンガたちのオマージュ的な設定や表現も散りばめられており、人によってはさまざまな懐かしいマンガのシーンが思い出されるのではないだろうか。

しかしただの懐古趣味に陥らず、しっかりと作者自身の個性を出しているのがこのマンガの特徴といえそう。いや正直、○○年代がどうのこうのなんて、どうでもいいんだけれども。

『サザンと彗星の少女』はリイド社の運営する「トーチ」で13話まで試し読みできるので、まずは自分の肌に合うか試してみるのがいいと思う。

http://to-ti.in/product/sazan
※「トーチ」のサイトに飛びます

サザンはミーナと出会えてよかったな、そしてミーナもサザンと出会えてよかったな……読後は素直にそんな気持ちになった。

ボーイ・ミーツ・ガール、ガール・ミーツ・ボーイ。

王道展開、SF、少年と少女の出会い、カラフルな活劇……そんなキーワードにピピッときた方にはおすすめできる作品。

作者の赤瀬由里子氏は「子どもたちのために描く」という意気込みで、この作品を作り上げたそう。たしかに子ども向けではあるものの、「かつて子どもだった大人」の心や記憶の芯にもそっと触れるような、そんな作品ではないか。

自分で読んでも良し、子どもが読んでも良し。爽やかで甘酸っぱい読後感を味わいたい方は、ぜひ手に取ってみよう。

最後に、担当編集の中川氏の言葉を抜粋。

『サザンと彗星の少女』は、何というか、利益を最優先に考える版元の私たちにさえ「買う買わないはひとまず置いておいて、とにかく一人でも沢山の人に読んでもらいたい」と思わせる、なにか前向きなオーラをまとった作品です。

しかし商業出版ですから利益を追求しないのは嘘で、当然ここには矛盾が生じるのですが、「絶対にモノクロにはしない(オールカラーで出す!)、頑張れば子どもたちでも買える定価にする! しかし利益も出す!」というギリギリの落としどころを探って製作部や営業部とともに知恵を絞りました。その結果の上下巻全500ページ・オールカラー・各980円+税です。

色々と無茶をした部分もありますが、この本はきれいな状態で大事に棚に飾られるよりも、沢山の子どもたち、そしてかつて子どもだった大人たちの誰もが気軽に手に取ってボロボロになるまで読んでほしいという、著者と版元の思いというか執念の表れだと思って頂けると嬉しいです。もちろん大事に飾ってもらっても嬉しいです。

「サザンと彗星の少女」刊行によせて

なお、『サザンと彗星の少女』はU-NEXTで読むことができます。600ポイント(600円分)がもらえる会員登録も無料ですので、まずはこの機会にどうぞ~。

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