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激しく泣けるアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』ややネタバレ視聴レビュー、感想

2018年1~3月に京都アニメーション制作で放映された『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』をNetflixで視聴しました。

毎回、気がつくと涙が流れてしまっているという、本当に本当に素晴らしい作品でした!

原作は同名のライトノベル(暁佳奈・作)。正直、視聴前はこれほどの作品とは思っておらず、いい意味で裏切られました。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』あらすじ

元軍人のヴァイオレットエヴァーガーデンが見つけたのは、手紙を代筆する仕事。

手紙を通して触れる様々な人の気持ちが、愛を知らない彼女の心に優しい光を灯す。 

というのがNetflixの番組解説。ずいぶん簡単に書いてあるけれど、非常に濃密な物語でした。

では、さっそくややネタバレレビューにいきましょう! ※一部、イメージを伝えるために作中画像を引用していますが、すべての権利は制作者に帰属します



ややネタバレレビュー、感想

序盤

架空の世界。時代設定的には第一次世界大戦の雰囲気を醸している。

まず、作画のクオリティの高さに驚かされる。これを毎週放映するというのは、本当にすごすぎるし、演出もため息が出るほど素晴らしい。

そしてヴァイオレット。

元軍人とあるけれど、驚異的な身体能力で敵兵を殺める「殺戮機械」のような存在。感情を持たず、ただ人を殺すためだけの「道具」として扱われてきた彼女は、しかし、育ててくれたギルベルト少佐と、自身の両腕を戦争の最終決戦で失くす。

両腕義手となった彼女は、ギルベルト少佐の友人で退役したホッジンズ元中佐が起業したC.H郵便社で働き始める。

この時点ではヴァイオレットは少佐がまだ生きていると信じており、ここで働くのも「少佐の命令」と受け止めている。

そう、幼い頃から戦場で成長してきたヴァイオレットは、命令ありきでしか行動できない。そしてそのために、人の感情を読み取ることができないのだ。

この設定がもの悲しく、過酷な人生を歩んできた彼女の現在をよく表している。

そんなヴァイオレットだが、タイプライターによる宛名書きや配達といった定型業務は優秀にこなす。

この郵便社は「自動式手記人形(ドール)」というサービス名で代筆業も営んでおり、あるとき依頼者との会話を聞いたヴァイオレットはドールをやってみたいとホッジンズに希望する。

その会話に出てきた言葉というのが「愛してる」。

“愛してる”を……知りたいのです。少佐は最後の命令の後に……その言葉を私に仰いました。

少佐から……その言葉が出たのは初めてでした。それはどのような状態を意味するのか、私には……理解できないのです。

感情を持たないヴァイオレットは「愛」という言葉の意味を知らない。ギルベルト少佐の遺した最後の言葉である「愛してる」の意味を知らぬまま過ごしてきたヴァイオレットは、代筆業を通じてこの感情が得られるのではないかと考えたのだ。

ヴァイオレットは、本当に何も知らない。

戦争中、作戦で使うような言葉しか知らない。感情表現もできない。一方で、やり方が決められた仕事は間違いなく遂行する。

このアンバランスさが、序盤でよく描けており、この時点でヴァイオレットが「愛を知り」「人としての感情」を獲得していく物語なのだと推測することができる。

しかし、人の気持ちがわからず、発言を言葉どおりに受け取ってしまうヴァイオレットにとって、代筆という仕事はこの上なく難しいミッション。

最初の手紙はまるで軍隊の報告書のような出来映えで、皆をあきれさせる。

果たして代筆業をこなすことができるのだろうか、とハラハラする気分になってくるが、1話ごとに彼女は変化の兆しをみせていく。

第3話で養成学校の友人ルクリアが、戦争で唯一残された肉親である兄に宛てた手紙を書きたいが書けないという想いをヴァイオレットに吐露する。兄は戦争で両親を失ったことに責任を感じ、また自らも負傷して松葉杖生活となり、酒に溺れて喧嘩に明け暮れる毎日を過ごしていた。

そのときにルクリアが発した言葉を、そのまま受け取って手紙にする。余計な部分をそぎ落とし、ルクリアの本当の気持ちだけを残した、シンプルだけれどストレートな文章ができあがった。

お兄ちゃん、生きて…きてくれて嬉しいの……ありがとう

たったこれだけの、たどたどしい文章だが、ルクリアの兄は号泣する。手紙を読んだ者に、確かに想いが伝わったのだ。

こうした瞬間瞬間を経験して、ヴァイオレットは少しづつ前へと進み始める。

中盤

基本的に1話完結型で、依頼者それぞれのエピソードがあり、彼ら彼女らとのやりとりを通じて、ヴァイオレットは少しずつ変化していく。物語を俯瞰して見ると、ヴァイオレットの成長物語となる構図だ。

この「変化」がゆっくりと丁寧に描かれており、ちょっとずつ何かができるようになっていき、少しずつ何かを知ることができていくヴァイオレット。そして逆に依頼者たちもヴァイオレットの行動に影響され、人生をいい方向へと変えていく。

この対象的な構成が物語に深みを与えている。

最初はヴァイオレットは「笑う」ということすらわからない。だから笑顔もできない。両頬を手で挟んで口角を上げないと表情が作れないほど(この行為自体も変化である)。

個々のストーリー的には王道なのだけれど、それがかえって良い。奇をてらうことなく、まっすぐに展開していく物語は、だからこそ心に染み入り、素直に共感することができるのだ。


第5話のラストでは、少しぎこちないけれど笑顔が作れるようになった。


第7話では娘を病気で失った劇作家の話を聞き、「大切な人を失う」ということに共感して涙を流すことができた。

そしてこの第7話の終わり、共感することができるようになったヴァイオレットだが、そのために戦場で命を奪った人にも大切な人がいて、その人たちの「いつか、きっと」までも奪ってきたのだと気づく。

成長したがゆえに、今まで持ち合わせていなかった感情に苦しめられることになる。そうした心の変化と、その変化による負の作用が、見事に描かれていると思う。

その傷ついた精神状態のまま、ギルベルト少佐の死を知ることになり、郵便社から飛び出すヴァイオレット。

ここから終盤へと入っていく。

終盤

海軍省に押しかけ、ギルベルト少佐の兄であるディートフリート大佐を呼び出すヴァイオレット。


ここでは、これまで少佐の死が隠されていたことに対する「怒り」の表情を露わにする。

ディートフリート大佐も弟の死を内心では悲しんでいるが、ヴァイオレットに厳しく当たる。


その後、少佐の実家に赴くが、少佐の墓が立てられており、茫然とするヴァイオレット。

過去の回想。


戦場で無表情のまま人を殺めていくヴァイオレット。


ギルベルト少佐は読み書きのできないヴァイオレットに文字を教え、言葉を教える。報告書は文字を覚えるのに役立つから、毎日書くように命じる。

序盤でヴァイオレットの手紙が報告書のようだったのは、こうした経緯があったのだ。

少佐は、ヴァイオレットを戦争の道具ではなく一人の人間として育て、人生には大切なものがあるのだと教えようとする。

しかし、軍の上層部はヴァイオレットを捨て駒として扱い、戦局がヴァイオレットを必要とする。葛藤する少佐だが、ヴァイオレットを戦場に連れて行かざるをえない。

ホッジンズ中佐から「戦争が終わったら会社を興す(C.H郵便社のこと)」と聞いた少佐は、ヴァイオレットをその会社で雇ってくれないかと頼む。少佐だけは、彼女の将来を見据えていた。そしてホッジンズは約束どおりヴァイオレットを迎えにきたのだ。


少佐が死んだ要塞にまで訪れたヴァイオレットだが、ホッジンズに連れ戻され、自室に閉じこもる。

過去に自分がしてきたこと。ギルベルト少佐が死んだこと。そして自分の存在。それらすべてに絶望し、義手で首を絞めて自らの命を絶とうとするが、うまくいかない。

そして「少佐…少佐…。私は…どうしたら…。命令を…命令を…ください」と、以前の彼女に戻ってしまったようなことを口走る。

絶望に至る過程。

つらい描写であるが、ヴァイオレットの心情がよく伝わってくる演出だ。

そんなヴァイオレットのもとに、同僚のドールであるエリカとアイリスから手紙が届く。生まれて初めて、手紙をもらったのだ。励ましながらも見守る二人の姿勢が、ただただ優しい。

そしてその手紙に、かつてヴァイオレットが手紙を書いたルクリアの兄から、妹への手紙を代筆してもらいたいと書いてあった。部屋から出て、ルクリアの兄のもとを訪れて手紙を綴る。

手紙をもらうことは嬉しいのだと気づくヴァイオレット。そしてホッジンズの元に訪れ、「私は生きていていいのでしょうか」と問う。

ホッジンズは言う。

(君が)してきたことは消せない……でも――でも! 君が自動手記人形としてやってきたことも……消えないんだよ。

と。

この台詞とともに、これまでの依頼人たちとの回想シーンが入る。人を殺めたという過去は消せない。でも、その後に経験した依頼人たちとの温かな交流の数々、綴ってきた手紙の数々、それらの過去も消えないんだ。

このとき、僕の感動パラメーターはリミッターを超えました。

そして再び仕事に復帰するヴァイオレット。

第10話のアンと母の話、11話のエイダンとマリアの話は、ハイレベルなこの作品のストーリーの中でも屈指の完成度。特に10話は、こうして書いているだけでも思い出してきて、涙が浮かんでくるほどの名エピソードである。

少佐の死を乗り越えた後に、この2つのエピソードを配置する構成がにくい。

結末

第12話

最終的な和平交渉の調印が行われ、調印式に民間のドールを使用することに決まった。

その役目に選ばれた郵便社のカトレアとベネディクト。しかし調印式の地に向かう列車に、和平反対勢力が潜入。

現場に合流するヴァイオレット。

列車の護衛はギルベルト少佐の兄、ディートフリート大佐。

潜入した敵兵が列車を乗っ取る。ディートフリートはヴァイオレットを武器として見ているが、彼女はもう「誰も殺さない」と言う。

依頼人たちとの交流、そして戦場で殺めてきた敵兵……これまでの経験は、この日、このときのためにあったのだ。ヴァイオレットは「不殺」で敵を鎮圧することを試みる。

ところが多勢に無勢。ヴァイオレットは組み敷かれ、敵兵に刀を振り下ろされるが、間一髪でディートフリートが助けに入る。

しかし凶弾がディートフリートを襲う。ギルベルト少佐を守れなかったことを激しく後悔しているヴァイオレットは、彼女を憎んで暴言すら吐くディートフリートの前に立ちはだかり、義手で銃弾を弾く。

「もう誰も殺したくない」。その言葉を行動で示したのだ。

最終話(第13話)

敵兵を鎮圧し、爆弾の撤去に成功。その結果、調印式が行われて平和が訪れる。

ラスト近く、航空祭の場面。

ヴァイオレットはカトレアに勧められ、手紙を書くことに。宛先は、もちろん少佐だ。

だが、うまく書けない。そんなときに、これまでヴァイオレットにつらく当たってきたディートフリートが母に会わせる(もちろんギルベルト少佐の母でもある)。

そこで母は「貴女のせいではないわ。貴女が背負わなくて良いのよ」とヴァイオレットに告げる。

そして続けてヴァイオレットに言うのだ。

あの子は……生きてる。心の中で。

だから決して忘れない。思い出した日につらくても……ずっと想って生きていくわ。

だって今も……愛しているんだもの。

ヴァイオレットは泣きながら「……はい」と返事をする。

そして、ディートフリート大佐との別れ際。大佐は「あいつの分も……おまえは生きろ。生きて、生きて生きて、そして死ね。これが……俺からの最後の命令だ」とヴァイオレットに命令をくだす。

これに対してヴァイオレットは少し微笑み、

「もう……命令は要りません」

と返すのだ。去りゆくヴァイオレットを見送りながら、ディートフリートは弟のギルベルトの想いが彼女に伝わったのだと理解し、小さく笑みを浮かべる。

ラストでヴァイオレットは少佐に手紙を書く。長めなので割愛するが、締めくくりの言葉だけを記載したい。

そしてまた逢えたら……こう伝えたいのです。

私は今……“愛してる”を――少しはわかるのです。


これまでの経験を通じて、こんなにも感情豊かな表情を作れるようになったヴァイオレットは、愛の意味を「少しはわかるのです」と言えるまでの成長を遂げ、新たな居場所を見つけた。

これこそが、少佐が望んだヴァイオレットの姿なのだ。

ラストシーン。ヴァイオレットは新たな依頼者の家に訪問する。

依頼者の顔を見たヴァイオレットは一瞬はっとした表情になった後、お決まりのポーズで、

お客様がお望みなら、どこでも駆けつけます。自動手記人形サービス――ヴァイオレット・エヴァーガーデンです。

と言い、少し頬を赤らめたヴァイオレットのアップで終幕する。

多少意味深な幕切れだったが、依頼人が誰かというのを今考えるのはやめておこう。

「完全新作の予告(その後、2020年1月に新作劇場版として公開予定と発表された。下記に告知PVあり)」が入っていたので、もしかしたらそこでわかるのかもしれないし、わからなくてもいいのかもしれない。

とにかく、これほどまでの素晴らしい作品を送り出してくれた原作者、京都アニメーションの制作陣に拍手を贈りたい。


 

成長物語、感動物語……そういったストーリーが好きな方であれば、間違いなく刺さる作品だと思います。

今はただ、新作を心待ちにしています!

そして、2020年1月に新作劇場版で公開されることが発表され、告知PVが配信されています。まだまだ先ですが、楽しみに待ちます!

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』は現在Netflixで配信中。未見の方はぜひご視聴ください!

Netflix – 『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』

アニメの世界をより深く知るために、原作も読んでおくと完璧ですね!

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