アニメレビュー

戦争×魔女アニメ「終末のイゼッタ」ややネタバレ視聴レビュー、感想

架空の世界大戦(第二次世界大戦がモデル)の欧州戦線に登場した魔女を描く「終末のイゼッタ」を、Netflixで視聴しました!

前情報ほぼなしで見始めたので「魔女??」となったものの、うまい具合に時代設定と溶け込んでおり、違和感なく見続けられた。

放送は2016年で、1クール全12話のオリジナルTVアニメ。

帝国の侵攻に抗する小国の姫と最後の魔女…。軍事描写も魅力の架空戦記ファンタジー。

西暦1940年、ゲルマニア帝国に侵攻の矛先を向けられたアルプスの小国・エイルシュタット公国。

そんな中、エイルシュタットの皇女・フィーネは国を救うために中立国家・ベストリアへ向かう電車の中にいた。

こんな感じでスタート。

国名などは最初分かりづらいかもだが、基本的にヨーロッパの地理がそのまま当てはめられているため、一度覚えれば理解は早い。

では、早速ややネタバレレビューにいってみよう! ※一部、イメージを伝えるために作中画像を引用していますが、すべての権利は制作者に帰属します



「終末のイゼッタ」ややネタバレレビュー

冒頭は幼きフィーネとイゼッタの邂逅シーンだが、それはすぐにフィーネの回想だとわかる。

エイルシュタット(現実世界だとオーストリア西部に位置する)の皇女・フィーネはゲルマニア(現実世界だとドイツ)の侵攻に対抗すべく、ブリタニア(現実世界だとイギリス)との同盟交渉に赴くため、汽車に乗っていた。

そこをブリタニアの兵士に追われ、フィーネたちは汽車から飛び降りる。

ブリタニアにたどり着くものの、交渉前にブリタニアがエイルシュタットに侵攻してしまう。それどこかゲルマニアに捕らえられてしまう。

そして「最重要機密」として運搬されるイゼッタとともに、同じ飛行機に乗せられてゲルマニアへと向かうが、途中でイゼッタが覚醒し、フィーネを救い出す。

ここで驚いたのは、イゼッタが「箒の代わりに対戦車ライフルにまたがって飛ぶ」のである!

以後、イゼッタは対戦車ライフルを愛用し、最終話まで乗り続ける(最初のライフルは早々に廃棄)。

イゼッタの魔法のツボは「魔法が使える場所と使えない場所がある」という縛りがあることだ。この設定によって、より戦略的な戦いが求められ、面白さが増すのである。

こちらはフィーネを救い出した後の再会場面。空中で抱き合う。

イゼッタのフィーネに対する想い

現代に唯一生き残った魔女であるイゼッタが、なぜフィーネにここまで協力するのか。

それは、幼き頃のイゼッタが魔女であるために住民たちからあらぬ嫌疑をかけられ、あまつさえ農具で命を脅かされたときに、フィーネが身を挺して彼女の身を守ったことに由来する。

その時に受けたフィーネの腹部の傷は、今もなお大きな傷痕として残っている。

幼いイゼッタの目に、フィーネは女神に見えたことだろう。それ以来、イゼッタの口癖は「ひめさまのために」となり、フィーネに尽くしていくことになる。

宣伝作戦

この手の物語でちょっと珍しいな、と思ったのは、イゼッタの存在を隠す(秘密兵器とする)のではなく、大々的に世界に宣伝、喧伝することで「抑止力」としようとしたことだ。

イゼッタは報道陣の前で魔力を駆使し、ゲルマニア軍の一部を壊滅させる。その模様は世界に配信され、国内外ともに大きな衝撃を持って受け入れられる。

しかし、ゲルマニアのベルクマン少佐は皇帝オットーの命を受け、ある秘策を練っていた……。

もう一人の魔女

エイルシュタットには昔話として王と魔女の話が語り継がれてきた。しかし魔女は王の死とともに迫害され、拷問を受けた末に命を落とす。

その時の魔女の残留物からゲルマニアはクローンを造ることに成功する。これがベルクマンの行ってきた秘策である。

それが魔女「ゾフィー」だ。

エイルシュタットへの憎悪のみで構成される彼女の感情は、当然ながら現エイルシュタット、そしてフィーネ、さらにはイゼッタに向けられる。

さらにゾフィーは「魔石」の力により、常時魔法が使える。

そう、これまで無双状態だったイゼッタが、一転して不利な状況に陥るのだ。そして魔法が無力化したゾーンに墜落したイゼッタは、ゾフィーによって手酷い目に遭わされる。

ゲルマニア侵攻

イゼッタを破ったゲルマニアは、エイルシュタットに侵攻を開始する。

大公の死で国家元首となったフィーネだったが、イゼッタの敗北と敵軍の猛攻に遭い、戦況はたちまち不利となる。

首都は陥落し、落ち延びるフィーネたち。瀕死状態で救われたイゼッタは一ヶ月もの間、昏睡状態に陥っていたが、ようやく目を覚ます。ところが車椅子を使わなければならないほどの衰弱ぶり。

今後は車椅子に乗ったまま魔法を使うのか……と思ったのだけど、そんなことはなかった。

一方、ゲルマニアのベルクマンは、その存在が危険とみなされ、皇帝から配置転換を言い渡される。

この時点で、彼は国を裏切ることを考えたと思われる。

もう一つの魔石

エイルシュタットの参謀であるジークの手により、魔石の片割れがイゼッタに渡される。

魔石は地下に流れる魔力(レイライン)を吸い取り、魔力を増大させる力がある。反面、術者に多大な負担を強いるため、魔石使用は諸刃の剣だ。

「諸刃の剣」的なアイテムは多くの物語で採用されているが、この作品でもご多分にもれず、魔石がそのような役割を持つことに。

いい感じの設定、プロットだ。

最終決戦(最終回)

ゲルマニアは原爆を開発し、エイルシュタットに向けて放とうとする。ミサイルの動力はゾフィーの魔力。

そこに魔石を手にしたイゼッタが立ちはだかる。

ここでのバトルシーンは圧巻。飛行機を蹴散らし、何台もの戦車をぶん投げる。

イゼッタはミサイルに近づけないが、ゾフィーを基地から引き離せばいいと考え、ゾフィーを誘い出すことに成功。

しかしゲルマニアはゾフィーのクローンを何体も用意し、ミサイルだけでも飛ばせるような準備を行っていた。

このあたり、ゲルマニアは策を何重にも施しており、見ている側の緊迫感を誘う流れになっている。

一方、フィーネは祖国を裏切ったベルクマンの手引きで、ゲルマニアと反ゲルマニア同盟諸国の首脳会談の場へと乗り込む。ここでベルクマンは姿を消す。

この首脳会談は、ゲルマニアの手によって、エイルシュタットを地上から消し去ることを見せつけるために用意されていたのだ。

会談の場に潜入する際、ジークが囮になる。残念だったのは、ここでジークが退場してしまうことだ。おそらく大戦後の重職を担うであろうこの若者が、ここで死んでしまったのは非常に惜しまれる。

ただ、ジークはイゼッタの秘密(魔力を使えない場所がある)を知った自軍の若者であるヨナスを殺害した過去があったので、その贖罪という意味合いもあったのだろう。

無事に会談の会議室に到着したフィーネは、イゼッタとゾフィーの戦いの決着を見届けるまで、ゲルマニアの条件を呑んではいけないと首脳陣に忠告する。

イゼッタとゾフィー、そしてフィーネ

ここからはイゼッタvsゾフィーの戦いと、フィーネが一人で首脳陣を説得するシーンがほぼ交互に切り替わる。

イゼッタとゾフィーの掛け合いは以下だ。

ゾ「しぶといわね。あんな国のために。本当馬鹿よ

イ「あなたは本物の白き魔女なんでしょ? なのにどうしてそこまでエイルシュタットを憎んでるんですか?」

ゾ「私にはその権利がある。あの国に今人間がのうのうと生きているのは私を裏切ったおかげなんだから」

イ「話は聞きました。王妃様があなたを憎んだって。でもそれは…」

ゾ「違うの。裏切ったのはあの女じゃない。マティアスよ。捕まった私にあの女は言ったの。『ごめんなさい。でもこれはマティアスの遺言なの』と」

かつての王は、庇護していたゾフィーの力を畏怖し、自分の死後に災いが起きることを憂いていた。そのため、死後にゾフィーを葬るよう、妃に遺言を遺していた。

だから、ゾフィーは自分より国を取った王を憎み、自分の命と引き換えに生き延びたエイルシュタットの国民たちに憎悪を向けるのだ。

ゾ「私は彼に裏切られたのよ。あんなに愛してたのに。彼のために一生懸命戦ったのに! あんなにたくさん殺したのに…」

ゾフィーの悲痛な叫びが響き渡る。

ゾ「だから滅ぼす。あの男の国もその子孫たちも。心も体もボロボロにされて焼かれた痛みと苦しみを! あんたにはわからない。どれだけ私が辛くて苦しかったかなんて」

イ「わかりません。だってマティアスさんは王様ですよね。なら当たり前です。きっと辛かったんだと…悩んだんだと思います。

愛していたから。

でも、皆の命を預かる人はたった一人に拘っちゃ駄目なんだって、私のひめさまはそれを知っている人です。だから私の全部をあげられる!」

ここでイゼッタ、エッフェル塔(らしき建造物)を投げつける。凄まじい演出。

イ「私の命でフィーネの願いが叶うなら、私はきっと笑って火炙りにだってなれます」

ゾ「何も知らない小娘が!!」

「笑って火炙りになる」。なんという強く、信頼に満ちた言葉だろうか。

一方、フィーネは一人で説得を続ける。

しかしきっとフィーネは一人だと思っていなかっただろう。場所は違えど、時を同じくしてイゼッタとともに戦っている。そんな心持ちだったに違いない。

魔女の力を警戒する首脳に、フィーネは言う。

「貴君らが憂う魔法と魔女の戦いは今日この時をもって終わるを告げる。なぜなら…。魔力とは大地を流れる大河のようなもの。

イゼッタはその力の源泉であるレイラインの魔力を全て吸い上げてゾフィーを倒すつもりです。

そうなれば勝敗はどうあれ、全ての魔力と魔法はこの世界から消失するでしょう」

ここで、場面は少し前、イゼッタが連れていった山頂で語り合う2人の描写に移る。

イ「確かに私、死んじゃうかもしれません。でもそれでも欲しいものがあるんです。皆が明日を選べる世界。ひめさまが笑顔でいられる世界。

私は魔女です。嫌だって思った事もあるけど結局魔女としてしか生きられません。この力がある限り。

だから命じてください、ひめさま。『フィーネの魔女として戦え。全てを終わらせろ』って」

フ「嫌だ…」

イ「いっぱい考えたんですけど、ほかに何も思いつかなくて。だから」

フ「イゼッタ…我が魔女…そなたに命じる…」

作中でも屈指の名場面。

そして再び会談の場に。

「イゼッタはこの世界で最後の魔女となる。

魔法はこの世界から消え失せおとぎ話の中に去るでしょう。忌まわしき爆弾や禍々しき兵器たちとともに。

それでもなおゲルマニア帝国は世界の覇者たるおつもりか! お答え願おう!」

魔女はこの世から消える。これで勝負ありだ。首脳たちは反ゲルマニアの立場を貫くこととなる。

イゼッタはすべての魔力を吸収し、ゾフィーに向けて放つ。

「笑って火炙りになる」。その言葉どおり、イゼッタは笑っていた。

こうして、この世界からすべての魔力が消え失せることとなった。

光の柱が天空に伸びていくのを見て、泣き崩れるフィーネ。

その後、魔法のない世界となり、ゲルマニアはアトランタ合衆国(アメリカ)の欧州参戦によって劣勢を余儀なくされて敗戦。

ゲルマニアの皇帝オットーは自害(ということになっているが、側近であるエリオットが殺害したのかもしれない)。

しかしフィーネは予言する。

「おそらく、いつかまたどこかで戦火が交えられることになってしまうだろう。人の戦いの歴史は決して終わることはないのかもしれない」

ここで消息不明のベルクマンの描写。機密事項を他国に持ち出す。魔女の研究成果か、クローン技術か、それとも原爆の情報か、それはわからない。

そして3年後。

フィーネはとある山小屋に訪れる。そこには車椅子に乗ったイゼッタの姿が。

イゼッタの表情はわからないまま終幕するが、僕には魔力を失い普通の少女となったイゼッタが、嬉しそうに笑っているように見えた。


全体として、とても楽しめた。

第二次大戦の構図をほぼそのまま使っているので、地理や戦況が頭に入りやすく、すんなりと物語に入っていけたことも大きい。また、作画も素晴らしく、特に戦闘シーンの気合いの入れ方は半端ない。

対戦車ライフルに乗って翔び回る魔女の姿があり、敵対する軍人と魔女の存在があり、そして戦争という大きなうねりの中で翻弄されつつも自分のなすべきことを理解して行動するイゼッタとフィーネの成長があり……見どころが多く詰まった佳作といっていい。

観て良かったと思える、そんな作品でした!

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