アニメレビュー

『レクリエイターズ』は創作者必見のアニメ:名言とややネタバレレビュー、感想

2017年4月~9月に放映された『レクリエイターズ(Re:CREATORS)』。

ここ最近Amazonビデオで視聴したのだけれど、創作者必見のアニメとして、これは記事化しなければということでレビューいたします! ※ブログ筆者は小説家志望者です

制作陣は『ブラック・ラグーン』の広江礼威、監督は『Fate/Zero』等のあおきえい、音楽は『進撃の巨人』等の澤野弘之といった諸氏。

レクリエイターズあらすじ

自室でアニメ “精霊機想曲フォーゲルシュバリエ” を観ていた水篠颯太(みずしのそうた)の目の前に、画面の向こうに映っていたはずのアニメのキャラクター、セレジア・ユピティリアと、軍服を纏った謎の少女が現れる。

両者の戦いに巻き込まれた颯太は、2人を追って代々木公園へと向かう。

そこにPCゲーム “追憶のアヴァルケン” のキャラクターであるメテオラ・エスターライヒまで現れてー

というのが、第一話の冒頭あらすじ。

これだとイマイチわかりづらいのだけれど、要は創作物の「キャラクター」たちが、現実の世界に現れ、世界の存亡をかけて両陣営に分かれて戦うという物語。

それも、

  • ラノベ原作ファンタジーSFアニメ
  • ロボットアニメ(ロボ含む)
  • 子ども向けアニメ
  • ロールプレイングゲーム
  • サイバーパンクコミック
  • 動画投稿サイトの二次創作キャラ…

というさまざまなジャンルの作品が登場する。

しかもキャラクターたちが、自らを生み出した創作者(ラノベ作家やアニメ作家等)と出会い、会話するという、創作を行っている者としては興奮の設定。

この作品の熱量に心揺さぶられるものがあったので、さっそくややネタバレレビューにいってみよう! ※一部、イメージを伝えるために作中画像がありますが、すべての権利は制作者に帰属します



ややネタバレ感想、レビュー

序盤

  • 世界を救う派(主人公の水篠颯太陣営)
  • 現在の世界を壊したい派(アルタイル陣営)

という、わかりやすい二分構造。

第一話で高校生の水篠颯太、主要キャラとなるセレジア、メテオラ、そしてアルタイルが登場する。


颯太の部屋に現界してしまったセレジア。自作中ではヒロイン。


アルタイル(当初は「軍服の姫君」と呼ばれる)。

序盤でほぼキャラクターと創作者が出そろう。どのキャラクターも個性的かつ魅力的。

必ずしもその作品の主人公が選ばれているわけではない、というのも肝。主人公より脇役のキャラが立っているというケースは往々にしてあるからだ。


メテオラはRPGに登場する賢者(主人公側)。


左:アリステリアは自作中で主人公(アルタイル側)、右:弥勒寺優夜は自作中でラスボス(主人公側)。


ブリッツ・トーカーは自作中では主人公の相棒(アルタイル側)。

そしてこの物語の基本設定である「承認力」は、よく考えられたアイデアだと思う。

キャラクターの知名度、認知度が、この作品内では「承認力」と呼ばれ、キャラクターの強さ、技の豊富さ等に直接影響を与える。キャラが現実世界に召喚されたのも、この承認力の強さによるもの。

なので、アルタイルと対決しようとして作者が新たな技を創り出しても、認知度がない状態では使えないという縛りがあるのだ。

アルタイルを創り出したのは、かつての颯太の言動によって死に追いやってしまった「島崎セツナ」。このことは、物語の早い段階で判明する。

序盤ではキャラクターの登場と設定や背景を描いていく。また、キャラクターと創作者の会話、やりとりが非常に面白い。

そして現実世界に被害が及ぶにあたり、この状況を察知した政府は対策本部を立ち上げた。対策本部長は菊地原亜希。

彼女の説明を聞く政府のお偉いさんたちはやたら物わかりがいいのだが、彼らはアニメとかゲームに詳しくないようなので、従うしかないという心境なのだろうか。キャラクターと創作者を招集し、状況分析を大真面目に進めていく会議はなかなかシュールで面白い。

視聴者的には、「また政府のお偉いさんが邪魔をして……」という余計なストレスを感じることなくストーリーに集中できるので、そういう効果も狙っていたのかもしれない。

中盤

第6話からであるが、築城院 真鍳(ちくじょういん まがね)という、どちらの陣営にも属さない毒のあるキャラクターの存在が、物語をかき回していく。

刺激を与える劇薬のようなキャラクターを投入することで、一本調子ではなく、「この先どうなるんだ」というサスペンス効果がより得られていると感じた。

アルタイルが仲間である煌樹まみか(きらめき まみか)を殺害したあたりから、アルタイル陣営は徐々に瓦解の兆しをみせていく。

一方で、二次創作キャラであるがゆえに承認力が無制限に増えていくアルタイルの絶大な力を見せつける展開となっている。

とにかくこの二次創作キャラという設定がうまく、名もない人々が次々とアルタイルの二次創作を行うために、彼女は無限とも言える能力を得るのだ。ネット上ならではの「承認力」であると言える。

★「承認力」を得る難しさ

イラストレーターを目指す颯太は、pixivのようなイラスト投稿サイトに作品を投稿するが、まったく閲覧数がない。

ネット上にはイラスト、小説、動画投稿サイト、またはブログ、SNSといった、個人が発信するツールは多々あるが、「いかに見てもらうか」は非常に難しい問題だ。

どれだけ頑張ってもまったく見てもらえず、モチベーションが低下して、やめてしまったという人もいるだろう。

颯太の絵をたまたま気に入ってくれた島崎セツナと連絡を取る颯太だったが、セツナの人気(絶大な承認力)に次第に嫉妬心を抱いていく。このあたりの心の変化に共感できる人もいるのではないか。

そしてネット上の誹謗中傷に耐えられないセツナに、颯太は冷たく接する。嫉妬心もあったろうし、遠くにいってしまったセツナを再び身近に置きたいという身勝手さもあっただろう。しかし颯太と同じような境遇に陥ったら、自分ならどう応じるだろうか……と考えさせられる。

アルタイルの力は凄まじく、セレジアも体を貫かれて瀕死状態に陥る等、対アルタイル陣営は絶望の階段を下り始める。

政府側は菊地原主導で、「エリミネーション・チャンバー・フェス」という、主人公陣営のキャラクターたちの承認力を強化するためのイベントを立案する。

動員数は14万人を想定し、これだけの人々によってリアルタイムで承認力をアップさせようというもの。「承認力」をブーストさせるためには理にかなった作戦だ。

終盤

「エリミネーション・チャンバー・フェス」に向けて、各キャタクターたちの新たなストーリーや展開、コラボ等を着実に実施し、承認力の強化に努めてきた主人公陣営は、ついにアルタイル陣営と対決する日を迎える。

アルタイル陣営は、アルタイルを見限って謀反を企むアリステリア、そして娘の復讐を創作者に果たそうと戦線から離脱するブリッツ・トーカー、というように、アルタイル側から人物が欠けていく。

しかし、アルタイルの力は強大で、どのキャラクターも太刀打ちできない。戦闘のさなか、セレジアやアリステリアも命を落とす。

ヒロインのセレジアがここで退場するとは思っていなかった。

セレジアが自爆を選択せざるを得ない状況に、セレジアの創作者の松原は「逃げろセレジア! もういい! ヒロインも物語もやめちまえ!」とさえ叫ぶ。しかし……、

セレジアは「松原…私の世界にお話と…コーヒーを…創ってあげて。お願いね」と笑顔で死を迎える。

主人公のような死にざま、最高ではないか。自分の創作したキャラがこんな素晴らしい行動をとって最期を迎えるなんて……ここで僕は涙した。

結末

完全なる絶望下で登場したのが、水篠颯太の創作した「シマザキセツナ」。そう、アルタイルを創作した人物を創作して対抗したのだ。

そしてこのセツナの承認力の乏しさを「逆転」させたのが、トリックスター・築城院 真鍳である。彼女は自分の嘘を相手に否定させることで、その嘘を現実のものとさせる能力を持つ。颯太に自分の言葉を否定させ、セツナに承認力を持たせた。

颯太の手助けをした理由が「面白ければ何でもいい」というのも彼女らしい気まぐれさであるが、アルタイルにひと泡吹かせたいという思いは颯太たちと同じだったんじゃないかなと思った。

そのセツナを前にして動揺するアルタイル。セツナが登場するや、これまでの大仰なしゃべり方は影を潜め、一人の女の子キャラクターとしての素を取り戻すという変化は、手法として見事に思えた。

アルタイルを説得したと思いきや、電車に飛び込んで命を絶ったキャタクターであるセツナは、再び線路に飛び込まなければならない。それはあらかじめ決められた運命だから。

迫り来る電車がセツナの体を砕くまでの時間は、わずか0.5秒。

しかしその現実世界での因果を回避するために、アルタイルは決断をくだす。「新たな世界」を創出し、そこに逃れることを選択したのだ。現実世界の内ではなく、新たな「二人だけの世界」に。

そう、アルタイルとセツナは、その二人きりの新しい世界で生き続けることになる……。

どこまでも無敵を誇るアルタイルを相手に、どう終焉に向かわせるかと思っていたのだが、まさにこれしかない、という方法で物語を閉じたシナリオには脱帽。

そしてこの瞬間、物語の主人公はアルタイルへと反転する。視聴者はこの作品がアルタイルの物語だったことに気づくのだ。

颯太たちの当初の目論見は「説得」までだったようだ。しかし「シマザキセツナ」の再現性が高すぎたあまり、電車に飛び込むという運命まで再現されてしまった。

この運命の前にアルタイルがセツナ(創造物だとわかっているにもかかわらず)を救う決断をせず、ただ傍観者でいたのであれば、この直後にアルタイルは絶望と怒りで世界を破滅に導いていただろう。

そういう意味でも、アルタイルのセツナを想う行動が世界を救ったと言えるのだ。

大団円を迎え、生き残ったキャラクターたちはメテオラの魔力で創り出したゲートから帰っていくのだけれども、物語を通じてキャタクターたちが皆それぞれ成長していることを感じさせられる。

創作者たちにとっても、成長したキャタクターを目の当たりにすることによって、今後の創作に対する大きなヒントを得たに違いない。

そして皆が帰還する中、ゲートを創り出した術者であるメテオラは帰ることができない。自分の体をつかんで放り投げるようなものだからだ。

メテオラは現実世界に残り、魔力が消える代わりに物語の創作を始める。しかも電撃大賞と思しき新人賞に小説を応募しようとするのだ。

この流れ、すごくいいと思いました。

メテオラの創作者はすでに亡くなってもいるし、現実世界に残って小説を書かせるというのはうまい演出だ。それに彼女なら重厚なファンタジーを紡いでくれる、そんな期待も抱かせてくれる。


そしてそのタイトルを颯太が提案する。

「Re:CREATORS」と。

創作者向け名言集

この作品の特性上、複数のキャラクターと創作者が登場するため、「創作」そのものに焦点が当たり、数々の名言が繰り出される。

自身でも創作活動をする身として、いくつか紹介したい。


「修練を一度止めれば、得た技量は倍の速度で錆びていく」(メテオラ)

「まだ生まれぬあなたの世界はこれから幾万の作品、銀河の星々のような群に加わるべくきっとあなたを待っている。そのためにも研鑽を」(メテオラ)

「こっちも色々考えてんだよ! 好きに設定いじれるからって無敵になんかできるか!」(松原崇)

「妬みも僻みも感情そのものは否定せず、真摯に取り組むための足がかりとして適切に使えばいい」(メテオラ)

「誰も辿り着けない所へ辿り着こうとするから、そいつは主人公になれるんだよ!」(高良田慨)

大失敗するかもしれない。愚にもつかないものになるかもしれない。頑張ったのに何の意味もないまま終わるかもしれない。君はそれでもやる?」(セレジア)

「そうだ。物語というのはこうでなくてはいけない」(アルタイル)

「他の人はバカみたいと思われることでもその人にとってはその人だけの大事なことってあるじゃないですか」(まりね)

読んでる客のためや。おもろなるならいくらでも不幸を描く。人だって殺す。世界だってひっくり返すわ(駿河駿馬)

「最初から成功しとる人間なんぞおるかこのボケ。どんだけきつい夜があったと思うねん…」(駿河駿馬)

そういうん全部飲み込んで今日のここまで来とんねん。そんでも…マシなもんができれば…おもろいもんができよったらそんなことの全部がなんでもええようになんねや…ほんま業が深いわ」(駿河駿馬)

認めてもらえなくていいじゃん。その熱量さえあれば別にいいんじゃないかな? 世界にはそういう人だっていたよね。誰にも見せない作品をただ自分の為だけに書きまくって死んでいった人」(築城院 真鍳)

「あなたは弱くなんかないわ、あなたが本当に弱かったなら、私を描き出すよりも前にあなたはとっくに描くことなんてやめてしまっていた、そうでしょ?」(アルタイル)

「上じゃなくって、俺達は先へ行かなきゃ。物語がハッピーエンドに近づくように先へね」(松原崇)

「創作に魔力はいりません。いるのは情熱と修練。そして後は天運が決める」(メテオラ)

「形にせずにはいられない。たとえ失敗したとしても、誰にも認められなくても。それでも…僕は知っている。そうやって生まれた沢山の物語が時に誰かの心に届きそしてその人の日常を違うものに変えてくれることを」(水篠颯太)


個人的にはブリッツ・トーカーの創造者である駿河駿馬(女性です)の台詞が、一番ぐっとくるものがあった。

しかもこれらはすべて、自身が創り出したブリッツに撃たれた後の会話である。それまで飄々としていた駿河が、瀬戸際で本心を吐露するシーンには胸を打たれた。

メテオラの「修練を一度止めれば、得た技量は倍の速度で錆びていく」もそのとおり。それが怖くてもう何年も、「書く」という行為をやめたことはありません。

まとめ

颯太が実際には何も生み出していない、島崎セツナの遺族についてはまったく触れられていない、殺人を犯している築城院 真鍳は現実世界に残ったまま……等々、いくつかの問題的が指摘されているが、僕はとても楽しめた。

「熱い展開」がとても好みなので、非常に高いテンションを保ち続けた本作には、毎度心を揺さぶられっぱなしで、約25分の本編があっという間に終わってしまい、ほとんど一気見状態で視聴を終えた。

また、澤野弘之氏の音楽もとても良かった。

メタ作品が好きな方、また、とくに創作活動をしている方は、見ておくと良いんじゃないかなと思った。おすすめです!

現在、Amazonビデオで配信中ですので、ぜひご覧あれ。

Amazonビデオ『レクリエーターズ』

なお、僕が創作活動をする際に参考になった書籍も当ブログ記事『小説新人賞の最終候補経験者による「小説の書き方本」おすすめ10選!』として紹介しているので、こちらも参考までに。

POSTED COMMENT

  1. ひふみー より:

    この作品、一般的にはラストバトルの「締め」の部分の弱さからやや低い評価をされているようです。
    あくまで「作品の外側から“鑑賞する”立場の視聴者」からみると(本作を単なる「異色のバトルアニメ」として捉えた場合)いろいろと細かい矛盾や不満点があるようですが、一方でやはり「クリエイター」系の人からは高い評価とも聞きます。

    「単なる“異種ジャンルバトルアニメ”」ではないんですよね、作品の“根幹”はそこには無くて、その「タイトル」が示す通りこれは「クリエイター=ものづくりを志すヒト」の“情念”こそがその主たる「テーマ」であり「モチーフ」なのですが………「ただ作品を享受するだけの立場」の人には、そういったモノはちょっと伝わりにくかったようです。

    自分はしがないラクガキ師で「クリエイター」と名乗れる程のモノではないのですが、放映当時から大好きで、先日ある切っ掛けから再度通して見たのですが、やはり素晴らしい作品であると同時にその「根底部分」のコンセプトには“モノづくりをしない単なる鑑賞者”の心には響きづらいモノがあるだろうな………と感じました。

    • イカリ より:

      ひふみーさん>
      コメントありがとうございます!

      私もバトルアニメとしては捉えておらず、終始一貫して創作者に向けて発し続けるテーマや思いが心に響きました。確かに仰るとおり、プロアマ問わず少しでも創作活動に携わる人であれば本作を楽しめると思いますが、そうでない場合はそもそも実感できないこともあり、伝わりにくいのかなと思いました。

      以前視聴したのが5年前なので、近々あらためて観てみます!

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