6月20日からNetflixで「夜明け告げるルーのうた」の配信が始まったので、さっそく視聴しました!
「ちびまる子ちゃん」「クレヨンしんちゃん」の制作に関わり、「マインド・ゲーム」「ピンポン THE ANIMATION」等を手がけた湯浅政明監督作品。
アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門最高賞・クリスタル賞を受賞。長編部門・最高賞受賞は宮崎駿、高畑勲に次ぐ日本人3人目の快挙という注目作品です!
『夜明け告げるルーのうた』あらすじ
寂れた漁港の町・日無町(ひなしちょう)に住む中学生の少年・カイは、父親と日傘職人の祖父との3人で暮らしている。
もともとは東京に住んでいたが、両親の離婚によって父と母の故郷である日無町に居を移したのだ。父や母に対する複雑な想いを口にできず、鬱屈した気持ちを抱えたまま学校生活にも後ろ向きのカイ。
唯一の心の拠り所は、自ら作曲した音楽をネットにアップすることだった。
ある日、クラスメイトの国男と遊歩に、彼らが組んでいるバンド「セイレーン」に入らないかと誘われる。しぶしぶ練習場所である人魚島に行くと、人魚の少女・ルーが3人の前に現れた。
楽しそうに歌い、無邪気に踊るルー。カイは、そんなルーと日々行動を共にすることで、少しずつ自分の気持ちを口に出せるようになっていく。
しかし、古来より日無町では、人魚は災いをもたらす存在。ふとしたことから、ルーと町の住人たちとの間に大きな溝が生まれてしまう。そして訪れる町の危機。カイは心からの叫びで町を救うことができるのだろうか?
このようなストーリーで進行していく。
では、さっそくややネタバレレビューにいってみよう!
『夜明け告げるルーのうた』ややネタバレレビュー
この物語を貫くテーマのひとつが「音楽」。
- 打ち込みで曲を作るカイ(投稿サイトでも有名な存在)
- 同級生のバンド「セイレーン」へのカイの加入
- カイの父がかつて結成していたバンドの曲をおさめたカセットテープ
- カイの祖父の口ずさむ歌
そこかしこに「音楽」が出てくる。
そして何と言っても人魚のルー自身が、「音楽が流れている間は尾びれが足になる」という設定であるため、音楽とは切っても切れない物語。
またシンプルで線の少ない人物画、独特のカメラワークといったアニメーションの特徴は、湯浅監督の手腕が見事に発揮されていると感じる。
ストーリー展開は王道というか、よくあるパターンだ。
しかし、随所に効果的に使われる「音楽」が起伏を与え、定型パターンをうまくデコレーションしている。
カイの父のバンドが演奏していた「歌うたいのバラッド(斉藤和義)」。
カセットテープを発見したカイは、ネット検索してこの曲を知る。
なおこの際、画面に「斉藤和義」とあり、物語中でも斉藤和義は存在していることになっている。一番のクライマックスでもこの曲が流れ、作品テーマと合致していることがわかる。
そして終盤ではYUIの「fight」。
この曲の入り方が絶妙で、一気に物語が盛り上がる。
また音源はないのだが、ルー登場時の挿入歌「Dance Girl 踊り子」のポップでキュートさの溢れるメロディは非常に良いし、カイの祖父の口ずさむ「かわいい唇」も甘酸っぱさを放っており、とても好感が持てた。
いずれも作詞は湯浅政明監督で、作曲は櫻井真一。櫻井氏はテレビ番組や映画等に楽曲を提供している作曲家だ。
物語は「出会い、心の接近、協力、誤解、災い、救出、そして大団円」というパターンをなぞったもので新味はないが、さまざまな表現手法で新しさを感じさせてくれる。
そして主人公の成長。
無口で考えを明かさないカイが、ルーのおかげで少しずつ変化していく。最後は皆を救うために「歌うたいのバラッド」を熱唱し、ルーに「好き」だと伝えることができた。
その直前、ふだん真面目な父から「お前は思った通りやればいいんだ。思ったことを言っていいんだ」と背中を押されたシーンは、素直に感動した。
また、タコ婆は愛する恋人、そしてカイの祖父は愛しい母を人魚に食べられたと信じており、人魚を憎んでいた。その伏線も、最後に見事に回収する。いずれも溺れたところを人魚に救われていたのだ。
人魚に噛まれると人魚になるため、最後にかつての恋人と母がそれぞれ登場し、タコ婆とカイの祖父を人魚にする(祖父は直接的な描写はない)。そうして2人は救われる。
また、傘職人のカイの祖父の作った傘が、クライマックスで多くの人魚を日光から救う(人魚は日光を浴びると燃えてしまう)のも、効果的なアイテムの使い方に思えた。
一方、ラストの展開でルーたち人魚を虐げていた住人らを、理由なく救う点はもう少し説得力が欲しかった。
でも、視聴者は天真爛漫で無垢なルーを知っている。きっと「怒り」「憎しみ」「嫉妬」といった負の感情をそもそも持ち合わせていないと考えれば、それ自体が行動原理になっていると思えるはずだ。
総じて満足度の高い作品だった。音楽好きなら観ておいて損はしないんじゃないかなと思った。欲を言えば、中盤から終盤にかけてもう少し音楽を聴きたかったかな、という点。ちょっと贅沢な要望だけれども。
最後に、この作品のキャッチコピーを。
「君の”好き”は、僕を変える」。
「夜明け告げるルーのうた」のややネタバレレビューでした!
なお、Netflixは以下のプランで視聴できます。
- ベーシック(990円):標準画質(SD<480p>)、同時視聴1台
- スタンダード(1,490円):高画質(HD<720p/1080p>)、同時視聴2台
- プレミアム(1,980円):超高画質(HD/UHD 4K<2160p>)、同時視聴4台
僕はスタンダードプランに入っています。未加入の方はぜひ。