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世界は色に溢れている!アニメ「色づく世界の明日から」ややネタバレ感想、レビュー

色覚を失くした魔法使いの少女・月白瞳美(つきしろ ひとみ)が過去に飛ばされ、色を取り戻していくアニメ「色づく世界の明日から」を、Amazonプライムビデオで視聴。

丁寧かつ抑えめに展開されてきたストーリーが、最後に一気に繋がっていき、またその演出も素晴らしく、一遍の良質な映画を観ているような気分になった。

放送は2018年10月から、1クール全13話。

幼い頃に色覚を失ってしまった、魔法使い一族の少女・月白瞳美(つきしろ ひとみ)。

祭りの夜、彼女は祖母の琥珀(こはく)から「高校2年生の私に会いに行きなさい」と告げられ、魔法で60年前の過去へと飛ばされる。

気づくと彼女は、南ヶ丘高校に通う高校生・葵唯翔(あおい ゆいと)の部屋にいた。

自分の身に何が起きたかわからず、あわてて部屋から逃げ出す瞳美。しかしその姿が、唯翔の友人である川合胡桃(かわい くるみ)たちに目撃されていて……。

第1話のあらすじは以上。

こちらがPV第1弾。とにかく作画のクオリティが高く、雰囲気もよく伝わってくる。この時点で気になったという方は、ぜひこのネタバレ記事は回避し、Amazonプライムビデオで視聴を!

ややネタバレの方が気になる方は、以下の感想を!

※一部、イメージを伝えるために作中画像を引用していますが、すべての権利は制作者に帰属します

※また、ややと言いつつ結構なネタバレを含みますのでご注意ください



「色づく世界の明日から」ややネタバレ感想、レビュー

あらすじにあるように、瞳美は花火(色がない)の日にいきなり祖母の琥珀に時間魔法をかけられ、60年前の世界に飛ばされてしまう。

かなり唐突な印象を受けたが、おそらくそれは瞳美も同じであろう。感情移入という点では、このいきなり飛ばされるという導入はありだと思えた。

探しものは何ですか

飛ばされる前、琥珀からは「高校2年の私と会いなさい」と言われる。

2018年の世界に飛んだ瞳美は、同じ高校(60年前だが)の写真美術部の部員たちに声をかけられ、琥珀が住む「まほう屋」に案内される。

「まほう屋」ではさまざまな魔法(一時的に魔法の効果を発揮する「星砂(ほしずな)」)が売られており、この世界では「魔法」は一般的な存在になっていると思われる。

琥珀は留学中で不在と告げられるが、未来の琥珀からの手紙を渡して事情を説明した瞳美に、琥珀の祖母と両親は快く迎え入れる。いわば彼女らにとっては瞳美は家族だからだ。

過去に来ても相変わらず色のない世界を生きる瞳美。

しかし、公園で偶然会った男性がタブレットに描く絵にだけ、色がついて見えたのだ。

探していた色、がそこにあった。

魔法嫌いな魔法使い

男性の名は葵唯翔(あおい ゆいと)。彼もまた同じ高校の写真美術部員だった。

なぜ、彼の描く絵には色がついて見えるのか。その謎はやがて明らかになるが、今この時には誰にもわからない。

そして高校に一時的に編入入学した瞳美だが、魔法の能力はまだまだ未熟。皆の前で魔法を披露する羽目になるが、うまくいかず、ますます自分の殻に閉じこもる瞳美。

瞳美は内向的で、笑顔も見せない。そんな彼女に写真美術部の面々は温かく接する。

また、唯翔は瞳美の魔法について、

唯)「あのさ。あ…いや…えっと…その…また見せてよ。魔法。

星とか出せるの、結構すごいと思うよ。俺の絵なんかよりもすごいって、絶対に」

と感想を述べる。そっと微笑む瞳美。唯翔の描く色づいた絵もそうだが、彼女の心に唯翔の存在が大きく刻まれた一言だったと思う。

そんなこんなで写真美術部に入部する瞳美。そしてこのタイミングで琥珀が帰国する。

60年前の祖母と再会

帰国した琥珀は瞳美を抱きしめる。その光景は、60年後に祖母の琥珀が瞳美を送り出したシーンと一致する。

その後、魔法使いである琥珀も写真美術部に入部し、「魔法写真美術部」として活動をしていく。

色づく恋模様

高校生の部活生活を描くということで、恋愛要素も徐々に出てくる。

風野あさぎ(かざの あさぎ)は幼なじみで部長の山吹将(やまぶき しょう)のことをずっと好きだった。

でも、将は瞳美に惹かれていく。その瞳美は唯翔を……、そして唯翔は瞳美に……。

という少々複雑な関係が構築されていく。

やがてあさぎと瞳美は、将が瞳美に告白したことで、ギクシャクしてしまう。将は断られてしまうが、それでもいつもと変わりなく瞳美と接しようと努力する。また、瞳美も将にはっきりと「気になる人がいる」と自分の気持ちを伝える。

あさぎは瞳美と心から語り合うことで打ち解けていく。ここでようやく二人は本当に友人になれた、そんな気がした。

高校生ならではの気持ちの動き、心のざわめきが丁寧に描かれており、見ていて胸がつーんとする。

タイムリミット

この時代から帰りたくない、という気持ちが芽生える瞳美。

その気持ちは、瞳美の変化からもよくわかる。表情が多くなり、笑顔が増え、主張もできるようになってきた。それはこの時代の周囲の友人たちの存在が大きいからだ。

しかし過去に戻る時間魔法の効力は無限ではなかった。

瞳美の体に少しずつ異常が生じ始め(急に姿が消えてしまう等)、残された時間は少なくないことを知る。時間魔法を成功させるよう奔走する琥珀。

そして瞳美が未来に戻る時が決まる。それは二日後。文化祭の後夜祭の夜だ。

瞳美のまっすぐな気持ち

瞳美は魔法で紙飛行機を遠くに飛ばせるようになり、その紙飛行機を唯翔の自宅の部屋に飛ばす。唯翔は部屋の電気を明滅させ、飛行機が届いたと知らせる。

ここの演出、とても良かった。

そしてさらに紙飛行機を飛ばす瞳美だが、うまくいかない。紙飛行機を追いかける瞳美。一方、唯翔も部屋を出て、瞳美の元に向かっていた。

そして紙飛行機が、二人を結びつける。唯翔を見つけた瞳美は、走りながら、そのまま唯翔を抱きしめる。

あんなにおとなしくて内気だった瞳美が、感情の赴くままに駆け、唯翔をつかまえる。もう逃がさない、というほどに。

このシーンはなかなか胸が熱くなりました。

文化祭~そして色づく未来へ

文化祭での瞳美は本当に笑顔が多くて素敵だった。気持ちも前向きになり、皆を鼓舞するほど。変化と成長がよくわかる描写だ。

そして後夜祭の夜。

魔法陣の中心に立つ瞳美に、ひとりずつが言葉をかけていく。そして最後の唯翔が控えめに言葉を告げた後、瞳美の「まだ帰りたくない」という気持ちが魔法を暴走させてしまう。

瞳美は唯翔とともに、光の中に消える。

すると、かつて唯翔が迷い込んだ暗い部屋の中に。そこにいたのは瞳美だった。モノクロームの世界の中、瞳美は自分の気持ちをストレートに告げる。

ちょっと長いが台詞を引用する。

瞳)「唯翔くん! 良かった…私、まだ伝えたいことがあったの。

最後まで私、助けてもらってばかりだった…絵を見せてもらって、色を見せてもらって、魔法を褒めてもらったとき、嬉しかった…。

嫌いだった自分を見せても変わらずにいてくれた…私を全部受け止めてくれた…一緒にいるだけで、幸せだった…。

ありがとう! 唯翔くんが、私のこれからに魔法をかけてくれた」

唯)「俺もだよ…俺も、瞳美からたくさんの大切なものをもらったから」

瞳)「私…?」

唯)「本当は、絵を描く道は諦めようと思ってたんだ。けど…瞳美に会って気持ちが変わった。人に喜んでもらうこととか、絵を描く楽しさとか、そういうことを思い出したんだ。

自分を閉じ込めてたのは、俺だって同じ…瞳美は俺の絵に光を射してくれたんだ。暗い色も…明るい色も…全部が瞳美を作って…何も消さなくていい。未来でも笑ってて」

色が徐々に取り戻されていく。

唯)「好きだよ…瞳美」

瞳)「私も…大好き…! 唯翔くんの髪の色…肌の色…瞳の色…心の色…私…忘れない!」

唯)「俺も忘れない…」

唯)「俺たちはきっと、お互いの未来に色を取り戻すために出会えた」

その瞬間、瞳美はかつて自分でかけた「幸せになってはいけない」という魔法が解け、色が見えるようになる。

そして唯翔とともに現実に帰る。二人は「さよなら」を言い合い、瞳美は時間魔法で未来へと戻っていく。

戻る直前のこの穏やかな笑顔が、瞳美の気持ちを物語っている。瞳美だけではなく、唯翔の未来にも色を取り戻すことができ、そのことに対する充足感が見て取れる。

未来に帰ると、それはあの花火の夜だった。色のない花火は、しっかり色づいていた。そしてその場に留まっていた琥珀を抱きしめる。

瞳)「ねぇ…私、幸せになっていいんだよね」

琥)「もちろんよ。全部あなたが自分で手に入れたのよ。私はほんの少し手伝っただけ」

瞳美は「幸せになる」ことを自覚する。

琥珀はこの結末を知っていたからこそ、過去の自分(琥珀)に託し、瞳美自身が「自分でかけた魔法を解く」ことを期待したのだろう。瞳美はその期待に見事こたえたのだ。

タイムカプセルで号泣

未来の「まほう屋」に戻った瞳美は、琥珀からタイムカプセルを受け取る。

そこには、当時のアルバムがあり、生き生きと色づいた写真が残されていた。確かに60年前、彼ら彼女らと、瞳美は同じ時を過ごしたのだ。

琥)「それからもうひとつ。覚えてる? あなたが小さい頃読んでいた絵本」

そこにあったのは、一冊の絵本。作者は「あおい ゆいと」。これは本当にやられた。マジでやられました。号泣したのは私です。

瞳)「思い出した…この本にだけ色がついて見えてたの。

お母さんと何度も読んでたからだって思ってたけど…それだけじゃなかったんだ…」

過去に戻った瞳美に、唯翔の絵だけが色づいて見えたのは、こうした理由があったのだ。

この絵本のストーリーはかつての魔法写真美術部の仲間たちを動物になぞらえたお話。しかもストーリーはかつての仲間たちの声で読み上げられ、皆の映像が流れていく……。

この回想の使い方が抜群にうまいと感じた。さっきから自分の目から出る水が止まらないんですけど、何??

「みんなが森のほうを振り返ると、そこには大きな虹がかかっていました。世界には、こんなにいろんな色があったんだな…。

それから、ふと考えました。私の色は…何色かしら…」

表紙ではモノクロームだったペンギンが、裏表紙では七色の虹になっている。僕の目には滲んでよりカラフルに見えていた。

ラストで瞳美は墓参りに行っている。これはおそらく唯翔なのだろうが、それは明らかにはされていない。

そして瞳美は創業75年という「魔法写真美術部」に入部する。おそらくであるが、そこにいる部員たちは、かつての仲間たちの孫だろう。

このあたり、多くを語らない展開が良い。

瞳美のこれまでにないほどに自信に満ちた笑顔で、物語は幕を閉じる。


全体的に静かな作品だったが、丁寧な描写で終盤まで引っ張っていき、最終回はとても素晴らしい演出だった。

現在、Amazonプライムビデオで配信中ですので、未視聴の方はぜひご覧ください!

Amazonプライムビデオ「色づく世界の明日から」

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